6-3 少陰の隠し事
「よかった、生きてる」
しかしあまりにも酷い全身の怪我に、
その覚悟に、
堂を出て行く後ろ姿を、
「いや、気になるなら手伝えばよいじゃろうに、」
「なんか、ほら、お互いほとんど初対面だから」
そんなことを気にする神経はなさそうじゃが、と
「まあ、良いわ。色々世話になった。結末は最悪じゃったが、問題は解決した」
「けど、色々と疑問は残る」
そもそも
「彼女を殺さなくてはならなかった理由は、なに? 彼女は何を見たんだ? もしくは聞いた? なんだかすごく重要な気がする」
「考えても仕方あるまい。死人に口なしじゃ。いずれ解ることだろう」
「ねえ、姐さん。四神の契約はこの地に加護と恩恵を齎すけど、
かつての
なら、
しかし、生まれてからずっと見てきたが、そんな片鱗はなかった。かと言って、自分たちのような曖昧な存在でもない。
「それは、····妾の口からはなんとも言えん。
その含みのある答えに、
白虎の契約の後、明らかに様子がおかしかったのだ。
「まあ、とにかく、あやつが目覚めるまではここにおるのじゃろう? 暇なら妾に付き合え。お主も
「けどさ、彼があのひとだったなんて、思いもしなかったよ。姐さん、まさか知ってたなんて言わないよね?」
「さ、さあ······妾は忘れっぽいからのぅ······よく、憶えておらんのぅ」
「あっそ。いいよ、別に。過ぎたことだ」
遠い日々に思いを馳せる。
それは、とてもあたたかく、優しい日々だった。けれども、人と
だからそんなことも解らないで、そのほんの少しの安らぎに甘えていたのだ。
「俺は今が、一番良い」
それでも、彼と一緒にこの国を旅した、あの長い月日を忘れたことはない。思い出す記憶の欠片に、
出逢ったあの日も、雲ひとつない、こんな澄んだ青空だった。
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