5-25 赦さない
領域結界を展開し、黒い狼の姿で駆け抜けてきた
一方的に顔見知りである
指先が見えないくらいの袖の長い白装束を纏う
「······なんということじゃ。これでは迂闊に手が出せぬ」
目の前の光景は、最悪以外の言葉が見つからない。白を基調とした神子装束を纏う
「
「
ここに来るまで、
ただならぬ事態になっていることは察したが、まさかこんなことになっているとは、夢にも思わなかった。宝玉が砕けた今、一刻も早く白虎の加護をこの地に齎さなければ、いよいよ大変なことになる。
抑えていた陰の気や穢れがこの地を覆い、取り返しのつかないことになる前に、
「
「これも奴の策の内ってことかな。選択肢を与えているようで、実は一択しかないっていう、」
人の心理を利用した常に盤石なその策に、この数ヶ月、何度翻弄されたことだろう。その中でもこれは、最悪の事態と言えよう。考えている内に、
瞳に光はないが、口許は優し気に微笑んでいる。まるで人形のように美しいその姿に、思わず息を呑む。その手には
嫌な予感がして、
その瞬間、甲高い笛の音が響き渡る。
「
思わず昔の呼び方で叫んだことに、
笛の音が響いたその時、
かはっと圧迫された身体が軋んで、内側からなにかが砕けた音がし、衝動的に血を吐き出す。大きな岩に、圧し潰され続けるかのように加えられる重力に、
(どうする?
「どうするつもりじゃ? まさか、
「
「それはかまわぬが····なにか良い手を思い付いたのか?」
まあね、と
『姐さん、
『よし、まかせるのじゃ!』
頭の中に直接語りかけるように、ふたりだけで会話をする。
(使ったことないけど、あの譜術ならなんとかなるかも)
それは、幼い頃に始まりの
(譜術を反転させて相殺する。力を抑えれば、反動で
それは何とも奇妙な曲調だった。
『おい、
『こういう曲なんだよ、』
その効果があったのか、少しずつだが
しかし、さらに甲高い音色が
身体の内側から齎される苦痛に、思わず顔を歪ませる。骨が砕け、臓器を痛めつけているのだろう。何度目かの血を吐き、拭う余裕すらなかった。
(
真っすぐに見つめた先に立つ、無感情で微笑む愛しい存在。
微笑んでいるように見えた
――――――絶対に、赦さない。
次の瞬間、辺りを眩い光が包み込み、同時に大きな衝撃音が響き渡った。
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