5-24 夢の終わり
けれども
「君たちは何も知らないんだね。いや、都合の悪いことは何も語らず、利用できるものは利用する。それが、邪神のやり方なのかな?」
「あなたがなにを言っているのか、理解に苦しむ。我らの主はただひとり。
四天のひとりが三体の幽鬼を操り
青白い顔をした
「それよりもそこの
一番背の低い、少年のような姿の四天が疑問を口にする。
それすらも伏せられたまま、命令に従う矛盾。常に、主である
ただひとつ解っていることは、
その宝具である笛の音は、自分たちの操る妖者を制御し、さらに操る事すらできる。四天が
「そこの主に訊ねてみるといい。納得する答えが返って来るとは思えないけどね」
ふふっと笑って、
それはちょうどそれぞれ額の真ん中に貼りつき、そのまま緑色の光を湛えて幽鬼の身体を焼いた。
悲痛な悲鳴が響き渡る。その反動が操っていた四天にも及び、奥へと弾き飛ばされる。
「さあ、次は誰が私と遊んでくれるのかな?」
くすりと笑みを浮かべ、疲れた様子もなく
四天たちは自分たちの方が有利なはずなのに、まったく勝てる気がしなかった。それくらい、圧倒的な霊力でそこに存在している。
『これが、
四神の加護と恩恵をその身に受け、底の知れない霊力を持つ、存在。ひとではない、モノ。
始まりの
四神と契約をし、真の
この国の穢れを祓うためだけに存在する、神の
しかもこの身は、始まりの
人から生まれ出たが、四神の力を得ることでひとではなくなり、不死の身となる。
始まりの
転生の必要すらなくなるのだ。
この国に四神の恩恵を取り戻す代償が、ひとではなくなるという事実に、
「ならば、俺が遊んでやろう」
異様な気を纏った
その時だった。
笛の音が伏魔殿に響き渡る。それは聞いたこともない曲で、
「残念だったね。もう、お互い遊ぶ必要はなくなったみたいだよ、」
「····まさか、」
「そうだよ。君がここに四天を呼び寄せたその瞬間から、こうなることは決まっていたんだ」
「もうずっと前に、陣は完成していたんだ」
光が止んだ時、
「
永遠ほどの苦しみからの解放を。
死という安らぎを。
重ねた手を、ぎゅっと握りしめた。その瞬間、先程よりもさらに眩しい光の波がふたりを中心にして広がり、邪神と四天を呑み込む。
伏魔殿全体を呑み込むだけでは飽き足らず、光は外へと広がり、
「私たちと一緒に、君たちは眠るんだ」
四天の姿はすでになく、光の中で立っているのはふたりだけ。
膝のあたりまである白銀の長い髪の毛。翡翠の大きな瞳。白い神子装束を纏った姿は、まるで本当の神様のようだった。
ひとつになった
蝕んでいた邪神を封じる。
その身を犠牲にしてでも。
たとえ二度と、逢えなくなろうとも。
「さよなら、だよ」
真っ白な光が溢れたセカイから、すべてが消え失せる。
それらは、あの日から五百年以上、一度も目覚めることはなかった――――――。
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