5-23 約束をしよう
だから、あの渓谷で、彼は言った。
「あなたを、待ってた」
その言葉の重みを、今更ながら
その度に記憶を消していたというので、今思えば、この横笛を持って帰って来た時の記憶が曖昧なのも納得がいく。
いつか、本当の意味で出逢った時、その真名を捧げると決めていたのだと。
実際は、待ちきれなくて攫ったわけだが····。
(あの、
今と同じく、あまり言葉を紡がないその青年を、
"一生共にいようと誓った、伴侶だった"
常に
そんな風に物思いに耽っていた、その時だった。
突如、小さな悲鳴が上がった。
その後すぐに
「
それは一瞬の出来事だった。
地面に大量の赤い雫が滴る。
「····れい、め······
悲痛な声で名を呼ぶ
「お遊びはここまでだ」
その先に重なった視線は、先程までそこに立っていた者とは全く違う、別の存在のものだった。その者は、始まりの
「
「俺の知らぬ間に、役者が揃ってるとはな。まあ、ひとりは瀕死だが」
くっくっと喉で笑い、
「
ぎゅっとその身体を抱きしめて、血で濡れた手を握り締める。身体を放し見下ろしてくる
「······無事、か····?」
「うん、大丈夫だよ。君が守ってくれた、から····、」
良かった、と
涙を拭い、
「
「
「それはできない。私は、この邪神を封じなければならない。君たちはここにいては駄目だ。
ふるふると首を横に振る。話は聞いていた。それでも、
「
離れない、と
そんな
「私は必ず君たちの許へ戻る。今燃えてしまった髪紐は、私が生まれた時から大切にしていたものだよ。君にあげた物と合わせて、ふたつだけしかなかった。でももう、この世にひとつしかない。だから、もし再び出逢えた時は、君が私に返してくれるよね?」
有無を言わせないその言葉に、
「
大きく頷き、
「
そこには、笑みが浮かんでいた。
「····しょう······ら、ん······」
「
言って、
残された
「四天、集え」
そんなことはまったく気付かず、
これが、本当に最期の闘い。
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