5-18 笑みを浮かべる者
気が焦って、思わず
「····あの子って、まさか、姉上のことを言っているのか?」
「けれども、役には立ったわ」
口の端を上げて、
そのためには
「でも残念。あの子はそれ以上の役には立てないから、処分するしかないわね」
「だから····何を言っているんだっ!」
物静かな
(よし、完成した!)
視界は目が眩むほどの強い光で真っ白になり、その場にいた者たちの視界が戻るまでの間、深い闇夜が真昼のように明るくなったのだった。
****
役目を終えた光が消え、闇が再び訪れた頃。
戻って来た視界の先に、ただひとつの影がゆらりと現れる。それは先ほどまで目の前にいた
折り重なるように地面に倒れている大勢の民たちの中、ひとり立ち尽くす真白い衣裳に身を包んだその者の瞳は、虚ろ。しかしその表情は、無邪気な笑みを浮かべていた。紛れもなく、彼は、自分の良く知る者だった。
「······
人形のように飾られたそれは、あの日、奉納舞を舞った姿に似て。
再び訪れた青白い月明かりが、ぼんやりとその姿を照らし出す。
「姉上····まさか、
「どういうことだ?
「蠱惑香は、妖者を一時的に操り、同士討ちさせる宝具。本来、人に使うことはない」
「二手に分かれよう」
え? とふたりは
「宗主たちが危険かもしれない。君たちは先にそちらを、」
有無を言わせないその表情に、ふたりは戸惑う。しかし、迷っている場合ではなかった。
「行け」
それを合図に、ふたりは反対方向へと走る。
そんなふたりの横を強い風が通り過ぎた。なんだ? と思わず瞼を半分閉じる。それは後ろにいるだろう、
角を曲がり、駆け抜けたそのずっと先に、煙が見えた。
「行こう! 急がないとっ」
「····ああ、そう、だな」
手を取り、引きずるようにして
よろめきながら走る少女を気遣う余裕は、
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