5-17 陽動
四天のひとり、
彼らの後ろには集結した虚ろな眼差しの民たちが並び、その数は百を超えている。小さな子供から老人まで、都中の疫病に罹った者たちが集まっているようだ。
「ふふ。この陣は妖者を召喚するためだけの陣じゃないのよ? ある特定の陰の気を招き、その地の
「なぜそんなことを私たちに教える?」
「この地にばら撒いた
「でもあなたの力なら、この事態を治められるのではない?」
しかし、この数は
「
彼女のそんな顔を、ここに来てもう何度も見ているが、民を想う気持ちに
(どちらにしても、民を盾にされたまま戦う事なんてできない)
赤黒い不気味な光のせいで、この辺りだけ異様な空気を纏っており、奥の奥に群がっている民たちをも照らしている。
(無の陣は実戦で使ったことがない。けど、失敗は赦されない)
「なあ、俺たちは見てるだけなわけ? もっと遊びたいんだが?」
「ああ、そうそう。もちろん、邪魔はさせてもらうわよ」
「そうこなくっちゃね。ってことは、俺の相手は····そこの色男かな」
視線だけ
しかし、待機していた民たちの足がゆっくりと動き出す。広い路を埋めるように集まって来た民たちの最前列が、もうすぐそこまで迫って来ていた。
「じゃあ私からは面白い話をしてあげましょう。ある、可哀想な女の話を」
「え····どういう、」
「
「あの子は目の前の真実を信じず、まやかしの影の言葉を信じた。人間って本当に弱い生き物よね」
哀れなものにかけるように、はあと嘆息して
そんなはずはない。そんな弱いひとではない。けれども絶対に違う、とは言い切れない自分がいた。
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