5-5 蕾
途端、
人ひとり呑み込んだその白い花は、大きな蕾になり、一瞬にして静寂が訪れる。
「妙に急いでいるように思えるけど、なにかあったの?」
「お前たちも見て来たであろう? あの都を。
「どういうこと?」
「十人の少女たちがひと月半前くらいから次々に失踪していて、未だ行方がわからん。数日前から
「ひと月半くらい前って言ったら、」
「けれども、それと
「都でなにか情報が得られていればいいのだが、」
少女たちの失踪はひと月半ほど前くらいから、最初は十日ほど置きに、次は五日置き、三日置き、とどんどん間隔が縮まり、十人目で止まったらしい。
その後に疫病が流行り、代わりに失踪は止まった。しかし三日前に急にまたひとり増え、しかもそれは
「でも
ふと、疑問が浮かぶ。神子の命がない限り、この堂を離れられない
「それは、ここによく来て手入れをしてくれる寡黙な少女が、妾の堂の前で訴えたからじゃ。
「大胆なことをするよね、姐さんは」
見えないとしても、普通の人間に触れるだなんて。一応神と名の付く者のすることではない。
だが、そういうことを何のためらいもなくするのが彼女でもある。
人間が好きでたまらない、この白虎という四神の性格上、そのままにはしておけなかったのだろう。
「お前たちが来るのは時間の問題だったし、
「ああ、そうだ、あのね、姐さん。
「そうなのか?
「ありがと、
そんなふたりのやり取りを、黙って
その先に見える大きな花の蕾の中で、
もう、あんな涙は見たくなかった。
****
――――
大きな花びらがゆっくりと花開き、陣もすぅっと消えた。途端、立ったまま眠っていただろう
その身体が地面に付くことはなく、細い両腕を
夕陽が空を染め、太陽が少し大きく見える。抱き上げた
瞼が震えて、ゆっくりと開かれた時、
あの中で何を見たのか、
その本当の意味を知ることになるのは、もう少し後の事。
この時、どうしてもっとしつこく訊ねなかったのかと、ふたりは後々後悔することになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます