4-24 病鬼の噂
村に唯一ある宿は賑わっていたが、皆どこか疲れた様子で、
「その衣、
「そうだ! そうに違いないっ」
商人のような身なりの者たちは、拝むように手を合わせて、お願いします! どうか! と口々に同じようなことを叫んで来る。
「一体どうしたというんだ?
宿屋の主人も、突然騒ぎ出した客たちをなんとか宥めようと努力していたが、勢いに押されて今は隅で縮こまっていた。
「実は、今、都が大変なことになっているようで······ここにいる客たちは都から無事に逃げてきた人たちなんです」
「は? いつからそんなことになっている?」
「それは······ああ、確か、
詳しく教えてくれ、と
微動だにしない壁のように立っている
代わりに、
「
「言っても数日だろう? そんな短い期間で、都中にだって?」
「ここだけの話ですが、どうやらその
人の世に害を齎すことがほとんど、というかまずないのだと。現に、渓谷の妖鬼はこちらを傷付けることはなかったわけで。それがどうして急に事を起こす必要があるのか。
(まさか、
しばらくして、自分たちが訴えたいだけ訴えたからか、言いたいことをすべて言い尽くしたからか、客たちは何とか落ち着いた。
一行はようやく宿の部屋に案内してもらい、
「私も、聞いたことがない」
「ひとつは、疫病は本当だけど、鬼の仕業じゃない。もうひとつは、
そもそもどう説明したらいいか迷っていた。渓谷の妖鬼は本当は
「四天は蟲笛使い、傀儡使い、妖鬼使い、幽鬼使いがいる。
「そうなると、今回は妖鬼使いってことですか? 特級の鬼を操れるなんて、厄介すぎるでしょう?」
そもそも、先程も言っていたが、特級の鬼に
「作り出したのだろう」
「妖鬼使いは、常に一体、傍に鬼を用意している。時間をかけて等級を上げ、自分に忠実な
「じゃあ、噂は真実に近いということ、」
こく、と
「大丈夫なんでしょうか?
青ざめた顔で
「なんにせよ、行ってみない事には始まらない」
宗主は倒れたと聞くが、その娘たちはどうやら無事らしい。邸を訪ねて、彼女らに話を聞いてみるしかないだろう。
「うん、そうだよね。落ち込んでなんていられないよねっ」
一瞬、自分のせいではないだろうかと考えて、止める。前に進むしかない。
不安を拭うように、無理に笑って見せる。それを見て、
笑顔を作っていた口元が少しだけ緩む。
「お前が気にすることじゃないだろ? 無理に笑わなくてもいい」
「ありがと、
ふたりの言動に
「難しい話は終わりましたね! では! 気を取り直して、温泉に入りましょう! ほらほら、
そう言って、大袈裟に明るく振る舞い、
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