4-23 玉兎
昔から温泉が有名で、それを目当てに術士や商人たちが立ち寄るため、都ほどではないが賑わいのある村であった。
山は険しかったが、なんとか二日ほどで抜けることができた。
特に厄介な妖者もおらず、その分体力も霊力も温存することができた。四人は竹林の中を進む。
足元がふかふかとしており、なんだか歩きにくい。体幹の弱い
「おい、気を付けろよ。お前たちはただでさえ足腰弱いんだから」
「ちょっと、人を老人みたいに言わないでっ······よ?」
言っている傍からよろけた
へへ······と恥ずかしそうに笑って、
「でも、本当に見事な竹林ですね。竹林と言えば筍。あとひと月早かったらぎりぎり旬物でしたね······筍料理を作って差し上げたかったなぁ」
特に
「
「いえいえ! 私が
なかば意地になっているようで、拳を握り締めて
そう、
なにをするにしても片時も離れず、見守っているという感じだ。もちろん、今みたいになにかあればすぐに手を貸す始末。
これでは主が怠惰な駄目人間になってしまいそうで、
「へへ。
「ちょっ!? やめてください! ホント、怖いんですって! 隣の人がっ!!」
腕を絡めてじゃれてくる
あのひとが何を考えているか本当に解らない! と
しかし、
(今日も、変わりないようだ。
賑やかしい声が竹林の中に響き渡る。
そのことに対して、
「
「はいはい。良かったな、楽しみが増えて」
竹林を抜けた先、西南の方角にその村はある。かつて
まさか今世でこの村を訪れる機会があるとは思いもしなかった。
昨夜、
「
じっと見上げてくる翡翠の瞳に、心が揺らぐ。
遠い昔の事だが、つい最近の事のように甦る記憶。思い出したら、色々な意味で罪悪感を覚えた。
もちろん表情には全く出ていないが。
そのやり取りを見て、
(さすが
離れた所で見守る
胸元を抑えて、小さく笑みを零す。
(あなたが、俺を見つけてくれた場所に、帰って来たよ?)
さああっと風が吹き上がって、笹の葉を舞い上がらせる。カサカサとこすれる音が響き渡り、まるで鈴が鳴っているようだった。
しかしこの靄こそが、これから遭遇する怪異の片鱗であることを、この時点ではまだ知る由もなく。
一行は半日かけて、やっと広い竹林を抜けたのだった。
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