4-22 文に託した想い
「ちょ、ちょっと待って。そういうのは慣れてないのでやめて欲しいんだけど」
拝礼を終え、顔を上げた
「
そんな
どちらも手に取り、文を広げて少し悲し気な表情を浮かべる。
「
「
生まれたその瞬間から、強い霊力を持ち、それを狙った妖者が押し寄せてきた。それは宗主によって祓われたが、その後は
「私は、あの子が普通の子として、平穏に生きてさえくれればいいと、愚かにも思っていたのです。ここで、ずっと一緒に笑っていられたら、それで良かったのに」
「ごめんさない。俺は、逆だったよ。俺は
けれども間違っていた。
最初から、そんなものは消え失せてしまっていた。あの日、
「それでも、あなたの子は、
同じ言葉をくれた。同じ魂を持つ、違う存在。
今の
「
「もちろん。それにね、
小首を傾げて
ふふっと
「それは、お守りみたい。肌身離さず持っていて?
「やはり、この地に、この中に、······裏切り者がいるのですね」
「まだはっきりとはわからないけど、用心するに越したことはないよ」
はい、と
「
「······わかった」
本当は。
本当は、そんなことを伝えたくはない。もしものことなど、不安にさせるだけだ。
しかし、なにかあった時に揺らがないように、
"――――母上、身体はもう回復しましたか? 風邪など引いてませんか? 俺は、
もう話は聞いているかもしれませんが、俺はどうやら
そう、俺は思っています。
あの邸での日々は、俺にとって幸せな時間でした。母上とふたりだけだった、あのなんでもない時間が、今はとても恋しいです。
自分の使命なんてよく解らないけれど、俺は俺のやり方で、歩いて行きます。母上はどうか自分の身を、今以上に大事にしてください。俺の事は心配しなくても大丈夫。俺の隣にはものすごく頼りになる人たちがいるし、
母上から貰った真名と同じ名を、ある人が口にしました。それを聞いた時、俺は生まれた時から
でも、母上が俺の母であることは間違いないし、変わることはない。ずっと、これから先も、俺の母上でいて欲しい。俺が帰る場所であって欲しい。だから、なにも悔やむことはないし、謝って欲しくもない。
俺は、母上が大好きだし、この旅が終わったら、一緒にたくさん話をしたい。あの縁側で、笛と琴を奏でたい。それまで待っていて欲しい。
必ず、ここに戻って来るから。"
瞬く星々に願う。
どうか、あの光が闇で覆われることがないように、と。
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