4-19 白冰の奇策
盛り上がっている中、
「······そういうことであれば、兄上の考えを尊重します」
「うん、ありがとう。上手くいけば、黒幕に辿り着けるかもね。まあ、あれにその価値があれば、の話だけど」
はい、と
「まあ、それはいいとして。ねえ、私の助言で、君たちの仲は少しは進展した?」
「私はね、君が少しでも笑っていられる場所を作ってあげたかったんだけど。どうやら、それはもう必要なさそうだね、」
寂しいような、嬉しいような、複雑な気持ちだ。それを与えたのは、他でもない
「君たちふたりが幸せになる未来を、私は願ってやまないよ」
別れがたい気持ちを呑み込み、四人は
次の地は、竹林に囲まれた古都、
****
その夜、
(よし、運がいいぞ!)
たった数日でこの結界牢から逃げ出せた。あの
黒装束を纏った大男は、久々の外の空気をしっかり肺に取り込む。崇拝する邪神の命令で四天のふたりについてきたというのに、とんだ災難だった。
暗闇に身を隠しながら、大男は見つからないようにこそこそと崖に沿って進んで行く。その背に小さな紙人形が貼りついていることにも気付かずに。
その姿をその上から見下ろしている者たちにさえ気付かずに。
「本当に良いのですか?」
「いいんだよ、あんな雑魚。貴重な結界牢がもったいないだろう?」
「わざと弱めてましたよね、結界」
「なにか問題でも?」
肩を竦めて
「まあ、紙人形がバレるのは時間の問題だが、そうなった時の仕掛けも二重にしてある。運が良ければ敵の本拠地まで運んでくれるだろう。期待はしていないけれど」
「あの大男は、一体なんだったんです?
それを他の者たちに伝えていいものか、迷うところだった。だが、
「あれは、烏だ。
じゃあ、あの大男は無事では済まないのでは? と、
「直属の配下は四人の闇の化身。名を四天。彼らに関しては特殊な能力があるということ以外は、あまり詳しくは解っていない。その中のひとりが
「あの時、崖の上にいたふたりがその四天の内のふたり?」
「彼らの気配は異様だった。妖でも鬼でも人でもない。闇の化身という言葉は的を射ているのかもね」
月夜に照らされた
「なんにせよ、動き出した。私たちも準備をしなくてはならない」
「······はい、」
離れてしまった彼らを追うことはできない。自分には自分の役割がある。
大男が視界から消え失せた頃、ふたりの姿もなくなっていた。
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