4-18 お世話になりました
黒い広袖の羽織に腕を通し、金の糸の刺繍が入った黒い帯の上に飾られた、臙脂色の
羽織の中の上衣は赤く、黒い羽織によく映える。左右の袖の下に、銀の糸の刺繍で描かれた二匹の胡蝶と、山吹の花枝の模様も美しい。
「
「ありがとう、俺もすごく気に入ったよ」
いつもの赤い髪紐をしっかり結って、背中に垂れた黒髪を梳きながら、
「
「俺もお礼をしたかったんだけど、たくさんもらったからいいって言われた。俺、一緒に遊んでただけで、なんにもあげてないんだけどなぁ」
ふふっと
上衣も下裳も白。帯は上下の縁が金色で、
長い前髪は真ん中で分けられており、他の髪の毛は頭の上でしっかり結って、銀の髪留めで纏めていた。
「はい、これでふたりとも準備は完了ですね。忘れ物はありませんか?」
綺麗に片付けられた部屋の中を見回して、ここで過ごした日々を思い起こす。このひと月半、長いようで短い時間だった。
ここにやって来た日のことを思い出す。厳しかったが、充実していた修練も、
すべてが、大切な時間だった。
(お世話になりました)
「よし、行こう」
うん、と
広間の前に最小限の荷物を持った
全員が宗主を真ん中にして綺麗に並び、
「
「はい」
「必ず、この身に代えても守り抜きます」
それは大袈裟じゃないか? と他の内弟子たちは心の中で皆思っていたが、誰一人として顔にも口にも出さなかった。
「
「うん、
夫人は我が子を旅に出す母親のように、涙目になりながら
「
「
「寂しくなる」
「そうだね、でも、またきっと会えますよね?」
泣き出しそうな笑みを浮かべて、
もちろんです! と大きく頷いて答えた
厨房で一緒に働いていた内弟子たちも数人集まってきて、皆がそれぞれ別れを惜しむ。
「
「俺たちも負けてられないなっ」
「いつか一緒に妖退治ができたらいいなぁ」
毎日の修練で共に過ごした日々は、知らず知らずのうちに結束を強めていた。
「ああ。俺はもっともっと強くなる」
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