4-11 出立まで、あと一日
よし、と
(食事は毎日の修練でボロボロになっているみなさんの、英気を養う大事な時間。時間を短縮できる簡単で、栄養もある食事を、と思ったけど、)
思い付くだけ書き綴ってみたら、だいぶ書物がぶ厚くなってしまった。
「ん? なにしてるの?」
厨房でひとりもくもくと何かを書いている姿を目にした
びくっと肩を揺らして、
「び、びっくりしました!
「うん、知ってる。今日は
「そうなんです? では他の方々も修練はお休みなんですね、」
そうだよ、と
「なに書いてるの?」
「あ、はい、みなさんに、僭越ながら私からの贈り物です」
「あ、これ、料理の調理法?」
ぱらぱらと捲って目を瞠る。うちの台所事情を考慮した上で、少ない食材でいくつもの料理が考案されていた。
「みなさんにはとても良くしてもらったし、
あはは、と卑下しながら
「なに言ってんの?
それは従者として、ではなくて。友として、兄として、家族として。しかしそれは叶わない。だって、それは、ただの我が儘だから。
「俺、
「あ、ありがとうございます」
一瞬、その眼差しに囚われそうになったが、
もし自分に兄弟がいたら、きっとこんな風に兄として世話を焼いていたのだろうと思わせてくれる。兄弟のいない
「私も、ずっとここにいたいと思えるくらい、大好きな場所でした」
「そうだ、あのさ、昼餉の後に時間作れる?
「お礼なんていらないですよ? でも、一緒に出かけるのは大賛成です!」
「じゃあ、きまりだね」
「なにが決まりなの?」
食材の入った籠を抱えて厨房に入って来た
「捕獲した」
「ん? なんて?」
説明もなく唐突にそんなことを言う
「最後に、たくさん思い出づくり」
「ああ······、」
(なんだろう、なんだか、すごく、)
胸の辺りがチクチクする。
これはなんだろう?
(永遠の別れでもないのに、なんでこんなに)
寂しく思うのだろう。
「大丈夫ですか?」
気付くと、
「なんでもありません。さあ、昼餉の準備をしましょう」
それに簡単に騙され、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます