4-8 蔵書閣
出立まであと二日。
蔵書閣は霊山の麓にずっと昔からあり、崖の岩肌の中に埋められるかのように建てられている。
湿気で貴重な文献にカビが生えるのではないかと心配になるが、意外にも中はそんなことはなく快適な空間になっており、構造は上手く説明できそうにないが、とにかく書物たちの保存状態は間違いなく良好だった。
地面は平面に整えられており、邸より高い天井のギリギリまで埋め尽くされた、頑丈そうな造りの無数の本棚の所々に、一番高い所まで届くだろう、いくつもの長い梯子が立て掛けられていた。
ひと月半ほどいたはずなのに、ここに
今もひとり先に前を行き、くるくるとあちらへこちらへと蝶のようにふらふらと迷い歩きしている。
「俺、もうここに住みたい!」
「······それは困る」
冗談なのに、
「
ひとり言のように呟いて、早くも断念しそうになる。本当に一生住んでも読み終わるか解らないほどの本の山に、
他の書物や文献などは棚の番号ですべて管理されているのだが、そのどこかに紛れているだろう日誌のことは、管理帳には載っていなかった。
「兄上が言っていた書物とは?」
「うん、
「········うん、」
背を向け背伸びをして書物を物色している
(······日誌?)
それ以来手に取ることはなかったが、まさか
「
「え? どうするもなにも、読むんだよ?」
それ以外何の目的があろうか。
「
真っすぐにその大きな翡翠の瞳で見上げてくる
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