4-6 悔恨と憂慮
明け方近くに、遠く北の空に咲いた薄青に光る陣を見上げ、
それを見た
「結局、守れなかったのね、私は」
「あのまま、ここに閉じ込めておけば良かったの? ううん、きっと、最初から、こうなる運命だったのね、」
ただ平穏に、無事に、生きていてくれれば良かったのに。
「こうなったのは、私が愚かにも罠を見抜けなかったせい」
すべては点と点で結ばれており、物事には意味がある。
(敵は、
あの日から、ずっと、この時を待っていたのだろう。
「けれど、きっと、あの子なら、」
何者にもなれないということは、何者にもなれる可能性があるということ。そしてもうひとつの名が、
(どうか、あの子をお守りください)
眩しい光の欠片が東の空に顔を出す。あの光は希望か、それとも。
動き出した歯車を止めることなど、誰にもできないと知りながら。
****
酷い怪我を負った者もいたが、それでも誰ひとり欠けることなく、
そして、あの光の雨。美しい紋様の陣が藍色の空を照らした時、神様でも降りてくるのかと思った。
事実、あれはこの地の四神、玄武の陣だったと後で聞いた。従者である
この地は四神と黄龍によって守られていたが、
(
まさかあの陣まで彼の仕業だったらどうしようかとも思ったが、
(もしかして、この地に
などと、
何の気なしに扉を開けて渡り廊下に出ると、遠くからふたつの影が近づいて来るのが見えた。ぱっと明るい表情になった
「
かけられた声に、
「
その声は、いつものように明るく、見たところ、ふたりとも目立つような大きな怪我もしていないようだった。衣はだいぶ汚れていたが。
「すまないが、こいつに何か食べさせてやってくれ。腹が減ったと連呼して、喧しくてしょうがない」
「はい、すぐにお持ちしますね! その間に衣を着替えておいてください。脱いだ衣はこの籠に入れておいてくださいね? まとめて洗濯しますから」
「はーい」
あんな大変なことの後でも、彼らは遊んで帰って来たかのような何でもないという顔をしているので、
なにも聞かず、なにも知らないふりをするのが、従者の心得だと両親が言った。故に、
そして早足で厨房へと向かうのだった。
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