3-20 氷楔
「ちょ、ちょっと、待って!」
「
机の上に座っているせいもあって、高い位置にいた
「ちょっと待ってください。俺は、
「たまたま見えるなんてあり得ない。それに、仮にも神と名の付く四神だよ? ただの人間や、ただの術士に跪くわけないでしょ?」
地面に座り込んでいる
(まあ、記憶が少しも残っていないなら、当然か、)
かつての
「
「そんな······だって、宝玉は百年は穢れをためても大丈夫なんじゃないの?」
「この地を覆う穢れ自体は微量で、術士たちが原因となる妖者を倒すことで均衡を保っているのです」
「しかし、今回のように神聖な水自体が穢れてしまうと、その穢れが水を通して陰の気を膨らませ、その陰の気がこの地を巡り、やがて土地全体が穢れていく。その度に宝玉が浄化を始め、穢れを吸い取ればどうなるか、」
「都の運河の穢れは早めに気付いて、領域結界で広がらないようになんとか封じ込めができたけど。その前の上流からの穢れは、宝玉が浄化していた。そのせいで誰も異変に気付けず、そのまま都にまで流れ付けたってわけだね、」
つまりは、都にあの怨霊たちが辿り着いた時点で、宝玉は限界を超える一歩手前だったということ。
しかも水龍が邪龍と化したことでさらに水が穢れ、その一歩手前だった一線は、猶予がほとんど無くなってしまったのだ。
「先ほど言った通り、日の出前まで私と契約を結べなければ、この地は穢れに覆われ、やがて人が住めない地となるでしょう」
「日の出まではあとどのくらいある?」
「あと、
「
そして、左右ひと房ずつ編み込まれて後ろでひとつに纏められていた、赤い髪紐を解いて口に咥えると、今度は長い髪を後ろでひとつに纏めて、高い位置で再び髪紐を結び直した。
よし、と顔を上げ、それから
「俺の友達が言ってくれたんだ。応えたくなったら、応えればいいって。俺は、あなたの声から逃げるのは止める。契約するためになにが必要?」
「なにも必要ありません。ただ、」
「氷の
途端、
「そして、話を聞くこと。ただ、それだけ」
徐々に凍っていく身体に不安を覚えたが、そんなことを考えている内に、
気を失うように意識を失った
その中で浮かぶように、立ったまま眠っている
「あとは、
「危険になったら、俺は迷わずに連れ戻すけどね」
この地がどうなろうが関係ない。大事なのはただひとり。
「鬼子よ、お前は、本当に、なにがしたいんだ?」
言葉をわざと切れ切れに紡ぎ、胸の辺りに人差し指を押し付け、睨んだ。
「俺は、俺の
「それを
ふんと
残された
くそ真面目な
触れていた手を下ろしたその時、首元にひんやりと固いものが付きつけられた。
同時に、突如背後に現れたその者の声に、耳を疑う。
「
「どっちだと思う? ねえ、役立たずの公子殿、」
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