3-3 双子の事情
「ふたりもお若いのにしっかりしていて、
作業をしながら、慣れた手つきで
「いや。そんな立派な人間ばかりじゃないさ。それに本当の意味で該当するのは、宗家の人たちくらいだろうな。一族の中でも双子は、昔からあまりよく思われていなくて、俺たちは
「
横で聞いていた
「そうなの?」
「え? なんで私に聞くの?」
そんな仲の良いふたりに挟まれ、
「おふたりが今のおふたりであること、私はとても嬉しいです」
人参と大根を薄く切って花のような飾りを作り上げながら、
それは何気なく呟いた言葉で、特に何も考えていなかったため、横にいるふたりがどんな表情をしているかなどまったく気にしていない様子で。
「よし、できた。どうですか、こんな感じで飾ると彩が出て皿全体が美しく見えるんですよ。無駄な才能ですが、私の唯一の特技です」
「すごいです! こんなの高い料亭でしか見たことないですよっ」
「なにこれどうなってるの? すごい才能」
ふたりは目を輝かせて、皿の上の飾り切りで作られた先ほどまでただの人参と大根だったものを、覗き込む。
それまではただの刺身皿だったのに、白い花と橙色の花が咲いていて、それがあるだけでとても華やかに見えた。
「家事全般はこう見えて得意なんですよ。幼い頃から叩き込まれましたからね」
生粋の従者である
しかし、見上げれば
(従者であることをこんなに明るく話す方は初めてだ。誇りを持っているんだな)
従者というのは主人のために尽くすことがすべてで、そこにあるのは自分の意志とは関係なく、強制的なものなのだと思っていた。
「俺にも教えて?」
「いいですよ。これをこうして、こうです。簡単でしょう?」
おお、と何度見ても神業な手さばきに
あんな風に自分たちを想ってくれる、少し頼りないけれど素朴で優しい青年に、
それがなんなのかは、解らないが、安らぎを感じるのは確かだった。
たったふたりだけだったセカイに、いつの間にか加わったその存在の大きさに、笑みを零さずにはいられなかった。
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