3-4 白冰の杞憂
厨房を後にした
渡り廊下の下は水で満たされていて、そこには白い蓮の花と青々とした葉が浮かんでいる。夏の頃は非常に涼しくて良いのだが、冬になると凍りはしないがかなり寒さを感じさせる造りだ。
西の別邸の扉を叩くと、中から扉が開かれ、見下ろし見下ろされる形で翡翠の大きな瞳と目が合った。翡翠の瞳の彼は、へへっと顔を緩めて敵意をこれっぽっちも感じさせない無防備な表情で、こちらに笑みを見せた。
「
「うん。ほとんど
「君たちも初めての長旅で色々と疲れただろう? 休ませてあげたいところだけど、母上がどうしても君たちのために宴を開きたいと言うものだから、もう少し付き合ってもらうと助かる。
「お心遣いありがとうございます。まだ挨拶もできていないので、場を設けてもらってこちらも助かります」
きっちりと腕を囲って揖し、もうひとりの公子である
「あと、俺のことも
「資格がないというのは違うと思うけど、師と弟子としての関係ならばこちらも気兼ねなく呼ばせてもらおう。でも私は君の師にはならないけどね」
え? と
「私は符術や術式系の術士専門の師なんだ。君はどちらかというと剣術と体術系だろうから、君の師は
「ああ·······そうなんですか、」
「いいなぁ。じゃあ俺は
「そういうことになるかな。でも君は他の弟子たちに混ざって、というよりは個別になるかもだけどね」
苦笑いを浮かべ、
「そうなの? 友達ができると思ったのに、残念」
「いや、お前がみんなと一緒に大人しく修練を受けられるわけがないだろ? すぐに疑問ばかり口にして邪魔をするだけだからな」
はあと嘆息し、
「では宴の準備ができたら誰かに呼びに行かせるから、それまではゆっくりしていて。慌しくて申し訳ないが、私はこれで失礼するよ」
ふふっと笑って
「
というか、正確には
いつも無表情で感情が読み取りづらい弟の眼差しは、少し穏やかに見える。
「君に仲の良い友達が出来て、私は嬉しいよ」
どのくらいこの
ぱたぱたと大扇で仰ぎながら満足げに笑みを浮かべて、
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