2-23 褒めてね
「うん、俺も同じことを考えてた」
あの時、途中で蟲笛が響かなかったら、たぶんあの鬼蜘蛛は制御できていた。自分の力を過信していたせいで、他の音に気を取られて失敗したが、しっかり集中できていたらこんなことにはならなかっただろう。
「少しの時間でも鎮めることはできたから、もしかしたらお願いを聞いてくれるかもしれないもんね」
「君に負担をかける」
「大丈夫。任せてよ」
笛を掲げて、にっと口元を緩める。
「どうしたの? この笛がなにか気になる?」
今まで何度かこの笛を吹いているのに、急にどうしたのだろうかと
「誰から、この笛を?」
「えっと、よく、覚えてないんだ。小さい時に誰かに貰ったんだと、思う」
いつの間にか傍にあって、それからずっと肌身離さず持っている。初めの頃は
「あの渓谷の鬼には初めて会った?」
「たぶん? でも彼は俺を知ってるみたいで。でも五百年ぶりとかよくわからない冗談も言ってたような?そういえば、あの鬼も笛を持ってた。黒竹の立派な横笛だったよ。紐飾りも繊細で、綺麗な琥珀の玉が付いてた」
「とりあえず、ここから出るんだよね? 手を、放してくれると嬉しい、な?」
「すまない、痛くなかったか?」
思い出したかのように、ぱっと手を放し、
大丈夫、と
「じゃあ、やってみるね。上手くいったら褒めてね、公子様」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます