2-15 鬼蜘蛛
「三人とも、こちらへ」
「なにか解りましたか?」
この数百年、村ひとつが丸ごと怪異に呑み込まれるなど聞いたことがなかった。
「この村の怪異は、おそらく私たちが去ってから二、三日後に起こった可能性が高い。正確に言えば、君たちが
「その根拠は? なんでそんなことが解るの?」
「この村全体を覆うように、陣が敷かれていた痕跡があった。それに、村人たちの亡骸を調べたが、精気を少しずつ抜かれて殺されたようだ。何日もかけてね。あとは村人たちの他に
「鬼蜘蛛は狩場と巣が別々で、狩場で精気を吸って、巣で肉体を喰らう。今は巣に帰っているのだろう。夜になる前に一度ここを離れた方がいい」
「どうしたんだい? なにか気になることでも?」
「······
「大丈夫か? お前にだけ聞こえてるなんて、何か特別な音なのかも?」
不協和音のような、違和感しかないその音は、
「もしかして········これって、」
それに気付いた時、突然大きな黒い影が地面に映った。危ない!と
それぞれその影を囲むように他の者たちも同じく後ろに飛んで、
細長い脚が左右四本ずつあり、腹部が大きく膨れ、胸部が固い殻で覆われた
「これが、鬼蜘蛛········?」
紫色の大きな眼と、漆黒の躰。口からは何かの液体が流れており、牙のようにも見える上顎と触肢が鬼のように見えた。
初めて目にする妖獣に、
視線だけ
(とういうか、こういう時にいつも傍にいるはずの
「
「は、はいっなにも見ません、聞きませんっ」
ふたりを盾にして、その身を隠し、腰を屈めて眼をぐっと閉じる。はあと嘆息し、
あちらも獲物を選別しているのか、紫色の眼の真ん中にある黒い部分が、左右上下にギョロギョロと忙しく動いていた。
「なあ、本当に平気か? 顔色が悪い」
「······うん、平気。音が止んだみたい」
腕を掴んだまま、離せずにいた。大体こういう場合に真っ先に狙われるのは、
「なあ、
「俺を甘やかさないでって言った」
うわぁ······と
その前になにか言ったか言われたか、他にも理由はありそうだった。
「
「は? お、おいっ!」
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