2-11 約束と誓いと
「ありがとう、公子様。えっと、あの鬼はここからいなくなったみたいだから、もう、離れても大丈夫だよ?」
宗主たちの傍を離れ、
「離れない」
「えっと、あの鬼とは知り合い?」
「······何年か前に一度、顔を合わせたことがあるだけだ」
その顔を合わせた時に、嫌なことでもあったのだろうか?
「
「なんで
「公子様も座って? 一緒に休もう」
「じゃあ俺もずっと立ってようかなぁ······」
「駄目だ。身体を休めて」
よいしょと立ち上がるふりをした
茶碗を
「そんなに見つめられたら、穴が開いちゃうよ? 気になって休めないし。ね? だったら一緒に座ろう? ほら、ここ。俺の横にいてくれる?」
くいっと薄青の衣の裾を軽く引いて、自分のすぐ横の地面をぽんぽんと叩き、ここと指定する。
少し考えた後、わかったと頷いて
(········あの
誰にも懐かない野良猫さえ、
「お前という奴は、本当に······」
「なに? 言ってみてよ。恥知らずって言いたいの? それとも
ふふんと自慢げに鼻を鳴らし、行儀悪く斜めに立てた右足の膝に頬杖を付いて、べぇっと舌を出した。こいつ······と心の中で呟きながら、ふんと
(この、人たらしめ)
本当の
良いことなのだと頭では解っていても、心が追い付かない。これから出会うであろう人たちすべてと同じように仲良くできるわけではないだろう。
そうなった時に傷付いたりしないように。
(俺が、守るって言ったのに、なんで他に色目をつかう?)
幼い頃、あの森で助けられた後に、強くなろうと決めた。邸の者たちの
いつか、自分が大人になった時、そのすべてから守ると言った。その誓いはずっと忘れていない。
それなのに。
鬼を前になにもできなかった。力もないし、度胸もない。口だけの約束など無意味だ。強くなる。きっと、この旅が終わるまでには。
「とにかく、お前が馬鹿をしないように母上に言われているんだ。いいか? なにか馬鹿な事をする時は先に俺に全部言うんだぞ!」
「えー。先に言っちゃったら、面白くなくなっちゃうじゃん!」
「バカ
やあやあと騒がしいふたりをよそに、
それぞれの想いを胸に、長い一日が終わる。
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