2-12 雪鈴と雪陽
夜が明け、朝早くから出立することになる。さらに高い渓谷の上から下に流れ落ちる水の飛沫の強さと大きさに、目を奪われる。
新緑が崖の所々にあり、岩だらけのごつごつした景色に風情が生まれる。
薄桃色の花や、紫、青の小さな花々も映え、滝にかかった虹に桃源郷を描いた巻物を思い出す。
吊り橋は古く、数人で一緒に渡ると一歩踏み出すたびに揺れた。風もそれなりに吹くので、深い渓谷の真下に広がる青い空が映った湖が、美しいはずなのに逆に恐ろしいとも思う。
「む、無理です! これ以上は耐えらえませんっ」
がたがたと膝を震わせ、情けない声で
(何も考えてなかった昨日の自分が恐ろしいっ)
まだ半分以上距離がある。一番後方を歩いていた
「あの人たちはともかく、おふたりともよく平気でいられますね······、」
同じ従者だというのに、
よく考えたら
「俺たちは従者ではなく、護衛だから」
双子の弟である
「はい。良かったら手を繋ぎますよ?」
蹲ったままの
「え、ええと········いいんですか?」
「はい、もちろんです」
おずおずと顔を上げて、体裁など気にせずに差し伸べられたその手を取った。
双子だとは聞いたが、身長も違うし、声や性格も違うようだ。顔はどちらも整っており、美少年という言葉がしっくりくる。
一方、
日々の雑用をこなし、嫌なことがあってもその場では取り繕い、影で文句は当たり前。
彼らよりも年上だが、情けない姿を晒してもなんとも思わない。顔は童顔のせいか年相応に見られないこともあるが、ただの一般人なのだ。
自分よりも背の低い、しかも年下の少年に手を引かれ、なんとか前を行く主たちとの遅れを取り戻そうと歩く。
「下を見るからダメなんだ。背筋を伸ばして、先を見ればいい」
一番後ろを歩く
「それが難しそうなら、私の顔でも眺めていてください」
「い、いや、それはさすがに········」
振り向いて真面目に言う
しかし綺麗な顔を眺めていては逆効果だと、
「なるべくゆっくり歩きますが、止まって欲しい時は言ってくださいね?」
「は、はい。ありがとうございます。おふたりは護衛と言ってましたが、お強いのですか?」
なんとか会話をして気を紛らわそうと、話を振ってみる。宗主と公子の護衛というからには、厳選された人材なのだと思うが、
上背も体格も自分とあまり変わらない
「俺たちはふたりでひとり。
「そうですね、そういう意味では自負していますよ。まだまだ修行中の身ですが」
そうこうしている間に、あんなに離れていた距離が縮まり、目の前に
この人は苦手だ······と心の中で呟く。それは昨日のことが大いに関係しているが、とにかくこの人がいる時は
「あ、
「け、結構です! 色んな意味で恐怖が増すので!」
「えー、なんで? いいじゃん!」
「喧しい。ふざけていないでさっさと歩け」
後ろで騒いでいる
「ふふ。
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