1-7 三人だけの秘密
「
「夫人、相手はまだ幼い子供です。手をあげるのは感心しません」
いつまでも収集がつかない現状に宗主は、仕方なくこほんとひとつ大きな咳をした。このままではここに集まっている従者や他の術士たちに、恥を晒すだけだ。
「とにかく、無事だったのだから良いだろう。落ち着いてからふたりに事情を聞けば、なぜこのようなことになったか解る。決めつけるのはよくない」
「なんですって!?」
「
宗主は有無を言わさず、夫人の肩を抱いて先に去って行った。続いて他の術士、従者たちがやれやれという顔で去って行く。
残された四人もその後をついて行く。前を歩く
弾むような足取りで、一番後ろを歩いている
「なあ······本当にだいじょうぶか? 母上の平手打ちは最強に痛いんだ。俺も一回されたことがあるからわかるよ、」
大切にしていた花瓶を割ってしまった時、
森は危ないというのは知っていた。しかし昼間なら
その結果道に迷い、宛もなく彷徨ってしまったせいで、このような事態になってしまった。
「こんなの、全然へーきだよっ」
いつもなら自分たちをいらっとさせるへらへらした笑い方が、今はなぜかふたりを安心させる。
「でも、俺が術を使ったのは内緒にしてね?」
人差し指を立て自分の唇にあてると、ふたりだけに聞こえるように耳打ちする。理由は聞かず、こくりとふたりはただ大きく頷いた。
この瞬間、この夜のことは、三人だけの秘密となったのだ。思えばこの時から、
たった十歳で、しかも符だけで、あの凶暴な
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます