1-8 いつもの光景
ふと、あの日の出来事を思い出していた
あれから五年経ち、十五歳になった。もう自分は大人だと自負している。
「明日は早いから、近場のこっちかなっ」
「よし、決まりだな」
仲の良いふたりの横で、むうっと
「ちゃんと私を守ってよねっ!」
「そんなこと言うくらいなら、ついてくるなよ」
「誰かを守りながら退治しなきゃならない状況だってあるでしょっ!」
はいはい、と
単に一緒にいたいだけのくせに、と素直じゃない妹の性格に同情する。兄としては応援してやりたいところだが、この恋は成就しないだろう。
なんせ義兄だから。
「大丈夫。
ふたりの会話を聞いていた
仮面の奥の瞳は相変わらずよく見えず、
怒っている理由がわからず、首を傾げる
(なんなのよー! もうっ!! ばかっ)
暗闇のおかげで、耳まで真っ赤になった顔を晒さないで済んだのが、せめてもの救いだ。
夜に相応しくない賑やかしい一行が向かうのは、
月明かりと、
澄んでいるはずの夜空にあるものがないことを、三人は気付いていなかった。
それが、この先に待つモノの不吉さを物語っていたことを知るのは、もう少し後のことである。
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