1-2 奉納祭まであと五日
「ここにきて、
まだ若く二十歳で、生まれつき病弱で術士としては存在感が薄いが、その博識さと寛容な性格が気に入られ、宗主である父を側で支えている。
(
寛容すぎるが故に、押しにも弱い。頭も良く行動力もあるが、なにより優しすぎるところがあった。どちらかと言えば、
「けど、毎回奉納祭は
「奉納祭は毎年行われる国の行事というのは知っているわね? けれども百年に一度だけ、各地方各一族が祀っている四神の
「その百年に一度が、今回の奉納祭ってこと?」
そうよ、と
俗世から離れ、どこかの山の奥の奥に住み、誰もその場所を知らない。だが一年に一度行われる奉納祭の時にだけ山を下り、四神への奉納舞を舞い、役目を終えるとさっさと去っていく。
彼らは今もなお先人と変わらぬ高い霊力を持ち、孤高の存在と化しているため、他の一族からも一目置かれているのだ。
十六年前。当時十五になったばかりの
その一年後に
つまりは母は
「百年祭とも呼ばれている大切な行事のため、間違いのないように、事前に手順や準備を頼んでいた
「でも、奉納祭って五日後じゃ····」
その言葉を受けて、魂が抜けたように宗主は肩を落とす。
さすがに大きな行事に乗じてなにか大事を起こすつもりはないと思われるが、過去にさまざまな嫌がらせや謀をこちらに仕掛けてきた夫人の前科が、肯定するのを迷わせる。
「きっと、大丈夫ですよ。私も気を付けますし、この子もいますから」
ね、と母は少女のように呑気に微笑むが、
「父上、なにかあったら俺が上手く動くから、安心していいよ!」
まだ十五歳の息子に励まされ、宗主は威厳のかけらもない緩んだ笑みを浮かべると、さすが私の息子だと満足気に頷くのだった。
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