1-26 幕引き
宗主は感情は抑えていたが、低い声音で
「そ、宗主まで、あの
「
「叔父上、宗主の言う通りです。なぜこんなことをしたんです? なんのために、こんな······」
「この女がっ!
「だから、
衣を掴んでいた手に力が入り、首が締まる。
「それは、いったい誰のために?」
「公子! 私はあなたのためにっ」
「私はそんなことを頼んだことなど一度もありません。その企みでこの奉納祭が失敗に終わったら、あなたはそれを夫人のせいにして、嘲笑うつもりだったのですか? それで私が本当に喜ぶとでも?」
「父上、どうかこの者とそれに関わった者たちすべてを罰してください」
「この者を連れて行け」
宗主が従者の方へ乱暴に放ると、観念したように言葉を失った
「
「はい、
どういう経緯で、とは詳しく聞かなかったが、あとで礼をしに行くことにしよう、と宗主は言った。
「後のことはこちらですべて片付ける。皆も、思うことはあるだろうが、今回はこれで解散とする」
その言葉を以って、宗主は早々に部屋を出て行ってしまった。それに対して誰かが何かを言うことはなく、残された者も次々に部屋を出て行く。
「母上、絶対に
「黙りなさい。私たちも行くわよ、
座したまま、眼を閉じて動かない
「
そっと
「さ、君も早く行きなさい。私は大丈夫だから、」
ずっと面倒をみてくれていた叔父が、とんでもないことをしたのだ。本音は大丈夫ではないだろう。それでも気丈に振る舞う義兄を、支えたいと思ってしまう。
「
「ありがとう、
よしよしと頭を撫で、
――――こうして、暗い影を落としながら、長い一日が幕を閉じたのだった。
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