1-25 毒紅の真実
「叔父上、どうされたのですか?」
「は、早くそれを拭って!」
止めたのは、
「ははっ······あなたは宗主や夫人、他の者たちが紅を付けても止めなかったくせに、
「どういう意味だ? この紅はなんなんだ?」
塗ってから急に不穏なことを言われて、
「でも安心してよ。この紅はただの紅だから」
「
その眼は、憎しみと恨みと、事が明るみに出てしまったことへの落胆が、入り混じったものだった。
「こうも簡単に引っかかるなんて、こっちがむしろ驚いてるよ。本物かどうかなんて、正直な話、五分五分だったでしょ?」
「
夫人はいい加減呆れて、肩を竦める。
「母上はこの紅が原因で、倒れたんです」
懐から本物の毒入りの紅の入った小物入れを取り出して、夫人の前に差し出した。その場にいた全員が真っ青になり、慌てて自分の唇と指に付いた紅を一斉に拭う。
「あはは。塗ってもらったのは普通の紅だから、大丈夫だよ」
「倒れただって? いったいどういう紅なんだ ?」
「先に言っちゃったら、意味ないでしょ」
黙れ!と忌々し気に
「それが毒かどうかなど、誰が解るというんだっ! お前が適当に言っているだけだろう? そもそも私がそれを用意したという証拠はどこにもない」
「自分で試したから、実証済みだよ。ひとによって時間差はあるけど、俺は舞を舞い終えて、父上にそこの
「だから、それで私が用意したという証拠にはならない」
「そもそもお前は自分で実証したというが、どう見ても毒に侵された様には見えないが? お前の方こそ嘘を付いているのでは? 紅に毒が盛られていたと嘘を付き、
ふっと
「ねえ、さっきから自分が何を言っているかわかってる? ほら、周りの人たちをよく見てみなよ。俺が母上が倒れたって言った時より、ずっとびっくりした顔してるよ?」
しん、と静まり返った部屋の中で、ひとりだけその過ちに気付いていない者がいた。宗主を含め、皆が押し黙り、
「俺は、この紅が原因で母上が倒れたとは言ったけど、それが毒だとはひと言も言っていない。連想はしたかもしれないけど、そこの
そしてそこに毒という言葉を
「······もういい。よく解った」
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