3-9 雪鈴って・・・
夕刻になり邸の部屋に戻ると、土で汚れた衣や痣と擦り傷だらけの
「疲れた········死ぬ······」
ぐったりとそのまま床に寝そべり、転がる。ぬるま湯の入った桶と布巾を手に、
「大丈夫ですか? 初日からすごい有様ですね、」
「いや、ホント······
「え? そうなんですか? これ、
そしてあの衝撃的な場面を思い出す。あれは昨日の料理の下準備の時だった。生の南瓜を片手包丁で、眉ひとつ動かさずに一刀両断していたのだ。
しかもそれを見ても自分以外誰も驚いていなかったことから、これが彼の日常風景なのだと知る。
「あの方が剣を振っている姿を想像ができません。どちらかというと
「そうなんだよ。そこが不思議でならない。あのひと、終止笑顔で内弟子たちを叩きのめしていたんだぞ。しかも誰よりも腕力あるし、」
ある意味、彼の真実を垣間見た気がする。あの性格なので、内弟子には当然慕われていて、あの歳で弟子たち二十人を纏めているもの納得だ。
「なんだか、楽しそうでなによりですね」
膨れた顔をしていても楽しそうに話す
自分は自分のやるべきことをし、それ以上は望まないに越したことはない。
「少し休んだら、身体も拭いてください。着替えはここに置いておきますね」
言って、
(食事で少しでも元気になってもらえるよう、私も頑張らないと!)
夕陽に染まった渡り廊下を軽い足取りで歩く。厨房につけば昨日と変わらない顔ぶれがすでに揃っていて、奥で
「
あははと首を傾げて困ったように訊ねる
「········あれ、遊んでたんだ」
「········滅茶苦茶楽しそうだったもんな、」
「あの笑顔が······俺は怖いよ」
「とても楽しそうでしたよ(だいぶボロボロでしたけど······)」
「ふふ。それは良かったです、」
じゃあ始めましょうか、と号令をかけて、夕餉の準備に取り掛かる。
気を取り直して、食材を吟味し、献立を決める。この時間はとてもやりがいがあり、
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