3-10 君って天才なの?
夕餉までの約
「君は一度も修練や座学に参加したことがないって言ってたよね? とりあえず基本的なことから始めようか」
「はーい」
文机を挟んで、
「まずは妖者の種類からいこうか。一番身近なのは
この地で最もよく見かける妖者で、その身体が朽ちるまで動き回るため、ある意味厄介な存在である。
焼くか、浄化し陰の気を抜くか、もしくは四肢をバラバラにすることで倒せる。昼はのろのろと動きが鈍いが、夜になると獣のように早く、凶暴になるのが特徴だろう。
「あとは悪霊や怨霊の中でもより強い存在を幽鬼と言って、人に呪いをかけたり時間をかけて命を奪ったりする。恨みをもったまま死んだ人間が悪霊になって、さらにたくさん人を殺して鬼に近くなった存在って感じかな。例外もあるけど。人の世で起こる様々な怪異は、これらが関わっていることが多い」
身体がないので鬼にはなれないが、それに近い悪霊というところだろう。
「妖鬼には等級があり、上中下の級と上級のさらに上に存在する特級がある。けど実はそれ以上に厄介な存在がいるのを知っているかい?」
「ううん。それは知らない。鬼の王みたいな存在ってこと?」
ばさっと大扇を広げて、
「
そうなんだー、と初めて知ったその話に、
「あとは妖獣。元は霊獣だったもので、
「でも
「それに関してはどの記述にも載っておらず、うちの蔵書閣にも資料がない。それも不思議な話だよね。唯一、かつての大戦のことを綴った日誌みたいなものはあるんだけど、それも史実かどうかは怪しいしね」
それは少し興味があるかも、と
「気になるなら読んでみるといい。作者も解らない書物だから、ただの妄想かもしれないけれどね、」
ふふっと笑って
「じゃあここからは符についての質問だよ」
違う書物を広げて
「この符陣の効果はなにかな?」
「これは通霊符。ここ数年の間に作られた符陣で、媒体、鏡なんかを使って遠くにいる人と話ができる符だよ」
「······え、なんで知ってるの?」
「え、だって、これ······俺が作った符陣だもん」
「··········え、」
嘘でしょ、と
「まだ完成はしてないけど、実用性があるから父上に渡したんだ······あれ? この書物に載ってる符陣、全部そうみたい」
「ちょっと、詳しく話を聞かせてくれる!? なに、君って天才なの? この符陣、全部君が作ったのっ!?」
ぶんぶんと肩を掴んで興奮した
(たまに助言してくれたのは、使った人たちからの情報だったってこと?)
まさか自分の知らないところで、他の一族にまで書物として配られていたとは夢にも思わなかった。しかも数ヶ月前に改善したばかりのものまで載っていたので、最新版と言えよう。
一部の物好きな者たちしか見向きもしない、妖者退治にほとんど関わりのない符術ばかり載っているのだが、
これを毎回試しては、匿名でその効果に対する改善点を文にし、
「もうさ、私の座学なんて止めにして、君の話を聞きたいんだけど!」
「それじゃあ俺の勉学にならないよ、
問答を繰り返し、結局明日からはふたりで新しい符陣の開発と研究をすることになってしまった。
気付けば
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