3-8 修練開始
ここは
「みんなも知っている通り、今日から
にこにこと満面の笑みでそんなことを言う
そして実際修練が始まると、
(体術は得意な方だが、やはり一族ごとに形は違うんだな)
組み相手から繰り出される突きや蹴りを受け流しながら、そんなことを考える。こういう状況で思い出すのもあれだが、兄の
しかし気を抜けば危うい攻撃に、手を抜くなんていう選択肢はなかった。
「······基本は問題ない。踏み込みの際の利き足に注意すれば、より速く動ける」
「あ、はい。やってみます」
今までその場その場で臨機応変に動くことに慣れているせいか、利き足を意識したことがなかった
すると、先程よりも一歩速く動けるようになった。当然繰り出される拳の力も増して、組み相手が両手で塞いだのにも関わらず大きくよろめいた。
「ごめん、平気だった?」
そのまま地面に倒れてしまった相手に手を伸ばして、そのまま立ち上がらせる。
「ああ、途中で気付いて手を抜いてくれただろう? おかげでこの通り、怪我はない」
自分より二つ年上の十七歳だという目の前の青年は、内弟子になって五年ほどだという。始めたのが遅かったため、他の内弟子たちの中でも一番上だ。
それを考えると、自分と同い年の
「······君は、その足が武器と言っていいだろう。誰よりも速く動けるのは特別な才能だ。それを伸ばしていけば実践でも役に立つ」
「ありがとうございます」
物差しでも背負っているかのように真っすぐ伸びた背は、どこまでも凛としている。
(そういえば
やはり教える者の存在というのは大事だと思い知る。反発する者から教わるのと、先入観なしでちゃんと見てくれる者から教わるのでは、違う。
前者は前者で負けず嫌いな自分には合っていなくもないが、素直に指示が聞けないためあまり身にならないのだ。
なので、
よし、と頷いて、
剣術の修練は木刀を使って行われた。まだ霊剣を持たない者が多く、実践でない限りは使わないらしい。
実際、一太刀も彼に掠ることなく、そのすべてを受け流すか、かわしてしまうのだ。
全員の長所と短所を伝えた後は
「あはは。みなさん、そんなことでは本物の妖者は倒せませんよ?」
ぜぇぜぇと疲れ切って座り込む内弟子たちを見下ろして、笑顔で笑いながら言う
内弟子たちは慣れているが、彼の実力も性格も知っているため、余計に弱音は吐けない。
(下手をしたら
しかも全員を相手にしたのに、まったく息を切らしていない。体力も腕力も実力もすべて、ここにいる十六人より遥かに上だ。
「いいですね、その
ふふっと
「本当、可笑しいよな。身体中痛いし、疲れて動きたくないけど、なんていうか、久々に楽しい時間なんだ」
「それはお役に立てて良かったです」
にっこりと口角を上げて
ぎゅっと両手で木刀を握り締め、再び地面を蹴って向かっていく。そうして何度も叩きのめされ、長くて短い一日目が終了した。
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