2-20 白冰の問答
下の陣は
上の陣は空中で印を結んだまま浮いている、宗主である
「妖獣はかつて霊獣だったものが、
「そのすべてを
「いや、違う。
その眼は鋭く、冷ややかで、問いの答えなど妖獣からは得られないと知っていながら自問自答を繰り返す。
ぱちんと扇を閉じ、口元にその先を当てて不敵な笑みを浮かべる。
黒い外殻に覆われていた躰がみるみる白色に変化していく。
陣を完成させ、ここに縛り付けるまでに村は半壊してしまった。もはや村人のいないこの村は村とは呼べないだろう。
扇の先で珍しい縦長の陣を描き、最後の線を重ねた時、それは青白く光を帯びてみるみる大きくなり、上の陣と下の陣を繋いでぐるりと回ると、円柱のような形になった。
まるで龍が滝を昇るかのような、その紋様の陣が足される。すると、筒の中に閉じ込められた虫のように、
筒の中で降る光の雪は、囲まれたことによって集中的に
巨大だった
それを確認して、各々陣を解く。あんなに明るかった辺りが再び闇夜に変わる。
「父上、どう思いますか?」
白い
「かつて、
「これを企てた者が、仮に玄武の宝玉を狙っていると考えると、やはり、」
「ああ······封印が解かれたと考えるのが妥当だろう。しかもかなり前に、」
それがいつかは今のところは解らないが。四神奉納祭の、しかも百年祭が行われたこの年に、立て続けに奇妙なことが起こった。
「他の地でもなにか異変が起こっている可能性があるだろう」
「
妖獣としても
「宗主、
一部始終を見ていた
何百年も解けることのなかった伏魔殿の封印が、解かれた。そういう話なのだろうと察する。しかし何年も
数日前のあの出来事は確かにそれを彷彿とさせたが、今もあの地は結界で遮られている。
「無事だったようだね。今の話は仮定の話。まだそうとは決まっていない」
「誤魔化しても無駄です。先程の話からして、ふたりの間ではほとんど確定しているようでした」
真っすぐな瞳で見上げてくる
「だとしても、君に何ができると? 我々でさえどうすることもできない。今できることは、君の義弟と
ぽんぽんと肩を叩き、扇を広げる。
「あとは、そうだね。ここで亡くなった者たちを弔ってやらないと」
「········はい、」
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