1-29 出会い、そして別れ
食事処を出て、そのまま
夕方近くにやっと帰ってきた
隣にいる
腕に抱えられた土産物をそのまま受け取って、奥へと持っていく。
部屋の前で声をかけて、中に入る許可を得る。ふたりは腕で囲いを作り頭を下げて挨拶をし、奥に座る宗主の顔を窺った。
「伯父上、戻りました」
「
「いや、礼には及びません。むしろ、こちらの方が礼を言いたいほどです。玄武の宝玉は浄化され光を取り戻しました。なにより、今まで見たどんな舞よりも、実に見事な舞でした」
六十代くらいの宗主は、目じりの笑い皺が特徴的で、威厳があるがとても優しい眼差しをしていた。ただ、瞳の色は
「
「いえ、こちらの方こそ感謝しています。今日も良く考えたら自分が一番楽しんでいたような、」
あはは····と苦笑し、
「とんでもない。友のひとりもいない子で、誰かと出かけるなど今まで考えられない事でしたので。よほどあなたが気に入ったのでしょう」
「それは俺も似たようなものです」
正直、友と呼べる者はいない。
「先ほどまで、
「父上が?」
そうえいば、昨日の夜に
「歴代の
「
謙遜する宗主にふるふると首を振って、
「
叶わないことだと知っていたが、
邸の外まで
「そうだ、俺に掛けてくれた衣なんだけど、明日見送りに行く時に返すね。持って来ようと思ったんだけど、まだ乾いていなかったから」
「別に、持っていてくれてかわまない」
「じゃあ、次に逢う時に返すね」
いつものように人懐こい笑みを浮かべて見上げると、その頬に
触れるか触れないかの距離で伸ばされたその右手は、触れる前に止まり、そのままゆっくりと下ろされた。
「君を、見つけられて、よかった」
その言葉の真意は解らなかった。けれどもどこまでも優しい眼で見つめられ、なんだか寂しい気持ちになった。夕暮れ色に染まった空が余計にそう思わせる。
「また、一緒に遊べるといいねっ」
そんな気持ちを振り払うように、
絶対に、また、一緒に。
そう誓って、
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