1-28 ふたりの時間
多くの人で賑わう都の盛り場は、様々な店が立ち並ぶ。
昼を知らせる鐘が鳴り、ふたりは丁度目の前にあった食事処へ入った。
任せると言われたので適当に料理を頼むと、少しして頼んだ料理が運び込まれ、丁寧に低い机の上に並べられた。
「
大皿にのった料理を少しずつ皿にのせて、
「どうしてあの時、
今更だが、なぜ昨夜、あんな場所に偶然居合わせたのか。それがどうしても気になっていた。あんな場所、普通なら頼まれても訪れたいと思う者はいないだろう。
「毎年、この時期に訪れている」
寄せられた料理を口にしながら、表情を変えずに
「そっか。でもそのおかげで俺も
「あれは、······かつてあの地を支配していた、
箸を置き、真っすぐにこちらを見つめてくる。
生まれた地で色が違うため、どこから来たかはその瞳の色で解る。翡翠は
「けど、ずっと昔に伏魔殿に封じられてるひとの陣が、どうして?」
「
すっと伸びた背筋は凛としていて、抑えていても低く響くその声は説得力がある。
「どうして、そんなこと知ってるの? 古い書物にも載っていないのに、」
陣のこともそうだが、まるで見てきたように語るので、不思議でならなかった。数百年前の記述は、その当時の
しかし、
「······
「蔵書閣? そんな珍しい書物がいっぱいあるの?」
ああ、と
「書物に興味があるのか?」
「
いつの間にか、正面に座っていたはずの
その後も
話に夢中でまったく気にしていなかったが、
(俺、もしかしてものすごく油断してる?)
それくらい、居心地が良い。
急に言葉が止まった
「あー······えっと、そろそろ戻らないと、」
そうだな、と静かに頷く。先に立ち上がって部屋の隅を占領していた荷物を抱え、空いている右手を
「あ、ありがとっ」
一瞬戸惑ったが、慌ててその手を取る。まるで、それが当たり前であるかのように手を差し出されたので、驚いた。
「ねえ。公子様は、いつもこんな風に色んなひとを甘やかしてるの?」
覗き込むように訊ねてくる
「····君にだけ」
と、真面目に答えた。
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