1-13 長い夜の終わり
毎年この時期に行われる奉納祭のため、各一族従者を含めて十人前後ずつ、数日前にこの地を訪れることになっている。
それぞれに用意された邸は掃除も行き届いており、数日生活するくらいであれば、足りないものはまずないだろう。
客用の邸は本邸ほどではないが広い造りで、部屋数も多いため、お付きの従者たちも不自由なく生活できる。
一族ごとに用意されているので、不要な争いもなかった。
背中に
(下手に仮面に触れられないから、なにかしてやろうにもできそうにない)
額から鼻の先までを覆う白い仮面。
生まれてすぐに宗主の手によって施されたもので、宗主と本人以外が触れれば強い力で弾かれ、触れた者、触れられた者のどちらも怪我をする。
触れた者だけならまだしも、
いったい何のために宗主がこんな危険な物を付けたのか。自分たちには知らされていない。
噂だけを聞けば、生まれた時顔が醜かったからとか、大きな痣を隠すためだとか、邪悪なものに呪われていてそれを封印するためだとか、様々である。
「
奉納祭では奉納舞を眺めながら、大人たちは酒を飲んだり一族同士の交流を深めたりするが、子供たちは膳の上に用意された精進料理を食べ終えてしまうと、舞が終わるまでは
今年の奉納祭は百年祭という節目で、いつもよりも豪華な飾りつけだったり、大きな舞台を特注していた。
いつもの母なら考えられない行為である。
それだけ、この奉納祭を成功させようという気持ちが大きいのだろう。自分の本来の感情を完全に封じ、利を得る方を優先している。
「俺も少し横になる。お前はもう一つの寝台を借りるといい」
「······うん、」
疲れていたこともあり、しばらくすると眠気が襲ってきて、そのまま深い眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます