1-5 竜虎と璃琳
こつん。
————こつん。
————こつん。
真夜中に小さく響くその音はいつもの合図で、
こそこそと庭に出て、不規則に騒がしく鳴いている蛙の声を聴きながら池の前を通り過ぎると、低い塀の天辺から顔を覗かせた顔馴染みを発見し、大きく手を振った。
月明かりが暗い夜の闇を照らす中、しーっと人差し指を立てて慌てるその少年は、同い年だが生まれた月がふた月だけ早い三番目の公子、
見るからに几帳面そうな彼は、
長めの前髪は丁度真ん中で分けられており、形の良い額と、整った顔立ちがよりその秀麗さを際立たせている。
低い塀をひょいと片手を付いて乗り越え、地面に着地した
「
綺麗に整えられた黒髪は肩の辺りまであり、そのひと房を括って飾られた、薄紫の花が付いた髪飾りがとても良く似合っている。
少女は右手に灯を、左手は兄である
彼女はふたりの三つ年下の十二歳。
「なにがお散歩ですか? よっ! そんなの見ればわかるでっ······もぐっ」
「
「ふたりとも大きいよ~あはは」
けらけらと笑って
「私はふたりの監視役よ。明日は奉納祭だし、なにかあったら大変でしょ?」
今度は声を潜めて得意げに見上げてくる。それはこっちの台詞だ、と
いつものように外にこっそり出ようとした所を、運悪く見つかってしまったのだ。
兄が怪我でもしたらとか、
「で? 今夜はどうする? 北東の外れに現れる徘徊する
ただ、
三人には兄があとふたりいる。ひとりは母違いの一番上の兄である
すぐに怒り手を上げるし、自分より下の者に対しての態度が最悪だ。
それを黙認するどころか、当たり前であるかのように肯定する母にも、その時ばかりは腹が立った。
なぜならこの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます