第2話
「響華様、朝ですよ」
梨紗の声が聞こえた後に瞼の上から日差しが降り注いだ。
目を開けるとカーテンを開けた梨紗がこちらを見ていた。
「今日は入学式なんですから早く起きないと遅刻しちゃいますよ」
寝ぼけた眼をこすり、そういえば今日からまた学校だったななんて思っていると既に制服に着替えていた梨紗に手を引かれて起こされる。
「梨紗の制服姿もかわいいわね」
翠麗学園の制服はブレザーにスカートで胸元には学年を示すリボンが付いている。
「はいはい、いいから響華様は顔を洗って着替えてください。私は朝食の準備を手伝ってきますね」
梨紗が部屋から出て行った後、私は伸びをしてから魔法を発動させる。
現れた水球が顔を綺麗にしてから霧散する。
そのまま周りの気配を探り、誰もいないことを確認する。
「
私は一瞬で部屋着から制服に着替え髪飾りやリボンなどのアクセサリーも付け終わる。
「やっぱり魔法って便利だなー」
鏡で自分の姿をチェックする。
金髪のせいかまるでアニメや漫画のヒロインのように見える。
「今日もかわいい」
そのまま鏡に向かっていくつかポーズをとる。
そんなことをしていたら朝食の準備が終わった梨紗が響華を呼びに来た。
そのまま兄の伊織と梨紗と朝食を食べて学校に行く。
明日からの登校は梨紗と徒歩になるが、今日は入学式なので車で送迎してもらう。
運転手には私が小学校の頃から付いてもらっていた月宮
幽斎は梨紗の伯叔祖父であり、強くて仕事ができる執事の鑑という感じで私のお気に入りである。
この世界では魔力量とオリジナル魔法、戦闘力によってS ABC...と大まかなランク分けがされていて中でもSランク上位12人はラウンズと呼ばれている。
ただランク分けされていると言っても戦闘を好まない者もいれば手の内を隠している者もいるため、絶対にランク通りというわけでもない。
幽斎はSランクであり、戦闘、特に武術に関しては素人であった私は鍛えてもらっていた。
学園はこれからは毎日歩いて行く距離なので車だとすぐに着いた。
車から降りるとちらちらと視線を感じた。
この世界に転生してから注目されることにはもう慣れたので気にせず梨紗とともに校門の方に歩き出す。
校門に近づくと人だかりができていた。
「何かあったんでしょうか」
「どうしたんだろうね」
人だかりに近づくと見覚えのある2人を見つけた。
「あれは、
鳳条家と鈴風家も天神家と並ぶ五代財閥である。
どちらも古くからある家系であり、上位貴族級の魔力に整った顔と人気がある。
「ひほふひほふー」
2人に挨拶すべきかどうか考えていると後ろから駆け足の音と共に声が聞こえた。
振り返ると食パンを咥えて腰くらいまでありそうな真紅の髪を棚引かせて走ってくる少女がいた。
私が止まって振り返り、周りには人だかりがあるせいでそのまま紅髪の少女が突っ込んでくる。
「響華様っ!」
即座に私の前に出ようとした梨紗を手で制し、少女を受け止め勢いを殺すために一回転する。
「危ないから気をつけな」
少女を解放して注意すると、少女はパンを手に持って頭を大きく下げた。
「ぶつかってしまいすみませんでした!入学式の日から少し寝坊しちゃって焦ってしまって」
少女があげた頭の上では寝癖か少し紅い髪が跳ねていた。
「あっ、私の名前は
「そう、私は天神響華でこちらは月宮梨紗よ。ここで立ち話もなんだしとりあえず学園に入ろうか」
いつまでも校門前にいるわけにもいかないので学園内に入ろうとすると今度は反対側からまたパンを咥えた青髪の少女が走ってくる。
「ちこくちこくー」
なんか
少女はパンを咥えたまま人だかりをすり抜けそのまま鳳条に突撃する。
色々と器用な少女だ。
「すみません」
ぶつかったことで尻もちをつきパンを落としてしまった少女が鳳条に謝罪する。
「最近はパンを咥えて走るのが流行っているの?」
梨紗は首を横に振り、流華はパンを食べていた。
何にしても面白そうな学園生活になりそうだ。
思わず口角が上がった。
バウムクーヘンなんていらない 鈴星 玲音 @tokotoko_rainy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。バウムクーヘンなんていらないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます