色めがね

青空一星

トンボのめがね

 私達トンボはキレイな色が好き。私の好きな歌で言ってたわ、トンボは飛んだ空によって目の色を変えるんだって。


 私の目の色はまだ無色。私はキレイな色の目になりたい。その方がきっと楽しいはず。だから私、母さんに聞いたわ

「どうしたらキレイな色の目になれるの」

って。母さんは

「キレイな色なんて母さんには分からないわ。無理なんてせずに、自分の思うキレイな色を見つけなさい。一番怖いのは自分の色が分からなくなること。自分の色を見失っちゃ駄目よ。」

って言ったわ。


 そんなこと言われても私、色の探し方なんて知らないし、とっても面倒だわ。


 だから私、友達に聞くことにしたわ。そしたら「私は赤色が好きだから赤色がいいよ!」

って言ってくれたの。私は夕暮れの空を飛んで赤色に染まったわ。でも、なんだか気に入らなかったの、思ったのと違ったってかんじ。


 私考えたわ、

「色付けに失敗したんならまた新しい色に変えればいいのよ。」

って。だから色々な空を飛んでみたわ。黄・緑・青・紫。どれもこれもなんだか気に入らなくって、どんどん色んな色に変えていったわ。変わることに慣れちゃって、どんな色になっても満足なんてできなかった。


 いつの間にか、何色になってるのか分かんなくなった。私母さんに聞いてみたの。母さんなんて言ったと思う?


「そんな色になってしまって、母さん悲しいわ。元々はあんなにキレイな色だったのに。残念だわ。」


なんていうのよ。もう昔の色なんて思い出せないし、思い出したってもう元の色になんて変えれないわ。元の色の私なんてもういないんだから。


 私ってどんな色だったんだっけ。母さんの言うとおりキレイな色だったのかしら。どうしよう、どうしよう。私すごく困ったわ、でも分かったの、

「キレイな色じゃなくなったんなら新しいのに替えちゃえばいいんだ。」

って。でも私、どうしても踏ん切りがつかなかったの。「もし代えても汚い色だったら?」「色が変わらなかったら?」「本当に今の色から変わる必要あるの?」って沢山沢山考えたわ。


 そんな風に悩んでたら真っ黒な色の目になっちゃった。黒は暗いし地味だから絶対になりたくなかった色。でも、もう空を飛ぶ気にもならないし、色も全く変わらなくなっちゃった。何がいけなかったんだろう。どこで間違えたんだろう。お母さんに全部教えてもらってたら良い色になれたのかな。友達なんて頼らずに、自分で好きにやってたら良かったのかな。なんにもなんにも分からなくなって、考えたくなくなった。


 そうやって迷いもなくなって、新しいのに代えることにしたわ。どうせこのままなら、もう終わりにしたいって思ったから。 そうしたら私の色、無くなっちゃった。もうどんな色にも染まれなくなって、私が消えてっちゃう。あぁ、どうせ失うんだったら持ってた方がよかったかな。私、何色に染まりたかったんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

色めがね 青空一星 @Aozora__Star

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ