第3話

運命なんかじゃなかった、、、。


それは、単なる僕の空虚な妄想だった。


彼女にはもう、愛している人がいた。

彼女は、その人の事を忘れようと一生懸命になっていた。


そして、その人の事で悲しんでいる。

誰かの事で、暖かい涙を流せるって素敵な事だと思う。


僕には、何もできない。

やろうと思えば、できる。

できるけど。


僕は彼女の事が好きすぎる。

だから、何もできない。

ほんとに、好きじゃなかったら自分の気持ちを押し付けていたことだろう。

でも、彼女の気持ちを考えたら、そんな勝手なこと出来るわけなかった。

ほんとに好きだから。


だけど。だけど。

わからなかった。


彼女は、その人のせいで泣いた。

彼女は、その人に傷つけられた。


なのに、何でだろう。

絶対、僕だったら、そんな事しないのに。

僕を選べばいいのに。

彼女を不安になんてさせないのに。


なんで、彼女は僕じゃなくてその人を選んだろう。


僕は彼女を、その人との思い出の場所に誘った。

そこが、彼女にとって大事な場所だとわかっていて誘った。


意地悪だよね。

わかってる。

だけど、希望を捨てきれなかったんだ。


もしかしたら、僕がその人との思い出を上書きできるかもしれないと淡い期待を抱きながら誘った。


でも、そんな事はなかった。

彼女にとって、僕との思い出は単なるサブストーリーでしかなかった。


だから僕は、悩む彼女にその人との未来があることを伝えた。


約束があるってことは、未来があるっていうこと。


いつか、君はそう言っていたよね。


その時、君は「好きな人と一緒に映画を見たい。」とも言っていたよね。

その願いを僕が叶えたかったな。


君は、自分の気持ちの居場所に気づいたみたい。


でも。

僕の好きな君はやっぱり優しかった。

僕の想いを振り払うことなんて出来ないみたい。


「ありがとう。」

その言葉を映画の半券にのせて、僕は彼女に半券を渡す。


君と、一緒に映画を見れることなんて無いのはわかってる。

だって、これは期限切れの半券だから。


彼女が幸せを掴めるように。

彼女が笑顔でいれるようにいれるように。


僕は、期限切れの映画の半券を握りながら、彼女の背中をそっと押す。






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僕が貴方に恋した日 瑞稀つむぎ @tumugi_00

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