第2話 姫騎士パメラ・ファルクス

 仕方なく俺は、町に向かって歩いて行く。


まずこの世界について、街並みについてを知らなければ………生き抜く術なんてないのだからな。


だがしかし、何故あの次元の手は、服装を考えなかったのか………そこが気になってしまう。


日本にいた時と何も変わらない姿、目立つなと言われる方が無理がある。


こうして調べてみると、中世的な街並みだ………とひしひしと感じた。


西洋風か、そんな空気が流れるが、日本語しか碌に話せない俺でも現地の言葉が分かる。


拾ってきた物を売って、必要な物を買うか………そう思った時だった。


俺は盗賊の集団にいつの間にやら囲まれていた。


「見ねえ顔だなぁ、テメエ………ガッポリ金を持ってそうだしヨォ?」


「チッ………めんどくせえことになったな………」


「やれ!!」とリーダー格の奴らが俺を殺して物を奪おうと襲い掛かってきた。


このままではリンチになって終いだ______そう思った時だった。


「そこまでだ!」というハスキーボイスと共に、剣を持った女性が盗賊を斬り伏せたのだ。


「旅人に危害を及ぼすようなら………この『パメラ・ファルクス』が斬り捨てる!!!」


逞しい、俺は率直にそう思った。


それに見るからに強そうである。


「クソ………!! ここで捕まるわけにゃいかねーんだよ!!」


盗賊のリーダー格の男がパメラ………という真紅の髪をした女性に襲い掛かったが………華麗に賊の攻撃を避けた瞬間に剣を脚に突き刺して動きを止め、賊を一瞬で拘束してしまったのであった。




「………悪い、助かった。」


「無事なら良かった。その………なんていうのか、というくらいに………君を襲う輩が現れる、という気がしてな……怪我はないか?」


まさかここでも当たってしまうとはな………「ピンチに助けられる」という未来が。


しかも人にまで影響を与えてやがる、どこまで占いを当てやがるんだ、俺は………。


しかし質問に答えなければいけないので、パメラに答えることにした。


「怪我はねえよ、お前が間髪入れずに助けに来たからな。」


「………まったく、姫騎士たる私に対して敬語を使わないのは余所者くらいだぞ? 何処から来た?」


答えに困る質問が来てしまった………。


日本から飛んできた、なんて信じるわけねえだろうしな………かといってはぐらかすわけにもいかないので、事情はひとまず説明する。


「家から変な穴に入ったらよ………気付いたらこの世界に居て、な………そんでまあ、今に至るわけだ。」


「??? 意味が分からん。そんなことが有り得るのか?」


「………そう言うと思ったよ………当の俺が未だに信じられねえんだからよ………」


「自分でも分からないままここに来た、というのか?? なんとも不思議な話だが………縁はありそうだな。そうだ、君、名前は?」


「『園子勇利』。タロット専門の占い師だ。」


「私は『サルヴァータ王国』第二王女兼『女騎士部隊隊長』の………『パメラ・ファルクス』だ。よろしく頼む。そうか………占い師、か。そうかそうか………」


「………なんか悪いかよ??」


「ユーリ、さることながら、君は?? 今の君の素性を聞いて確信に変わったんだ、君が私に未来を見せていたのだ、とな。」


………は??? 何を言っているんだコイツは………別に、俺はあくまで「今から未来を見透す」というだけであって、“未来予知”なんていう大層なモンは持ってない。


勘弁してくれ、変に巻き込まれるのはもう懲り懲りだ。


「あのよ………俺のはそんな大層なものじゃあ………」


「なにも謙遜なんて要らないぞ、ユーリ? 私は君のことが気に入った。王宮に案内してやろう、どうせ行くアテもないのだろう?」


「………否定はしねえが……」


「是非!! 宮廷占い師になってくれ!! 無論、報酬は用意する!! 私は衣食住を君に補償する、それでユーリは、戦の行方を占ってくれ!!」


………まあ、悪くはない話だが………俺は金には興味がない、いくらか勘違いしているようだが、何度も言うが未来予知を俺は使えるわけじゃない、買い被りも甚だしい。


だが悪い話じゃない、寧ろいい話でしかない。


衣食住を確保しつつ、この国のことを知って占いも好きなだけ出来る………そう考えたら俺にとっては有利な条件と思わざるを得ない。


win-winの関係は歓迎だ。


「承諾する、だから王宮まで案内してくれ、パメラ。」


「ありがとう、ユーリ。それでは着いてきてくれ。」


こうして俺は、「宮廷占い師」として生活することになるのだが、その先にある苦難を俺はまだ、“見ていなかった”のである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に飛ばされたタロット師は、姫騎士の恋の未来を言い当てる。 黒崎吏虎 @kuroriko5097

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ