アオハルの方程式
DITinoue(上楽竜文)
友達が欲しい
僕は高校2年のいじめられっ子、酒井海翔。友達はいない。親しいというか、頼れるのは自分の親と親戚、そして、警察官の宮永さんぐらいだ。
家に帰ると、僕はスマホを取り出して、あることを始める。それは、アプリを入れることだ。
学校で先生から聞いた。『友人ゲット』というアプリがあるから、それで友達を作りなよ、と。
僕はすぐに食らいつき、早速アプリを入れた。
アカウント登録を済ませ、自分の近くに住んでいる友達を探す。
数分経つと、友達候補が表示されるのだった。早速、友達候補の欄を見ると、一番上位に出てきたのは『化けの皮』という人物だった。好きなアニメとか性格とか、学校生活、そして、住んでいる場所もかなり近かったから、すぐに友達になれそうだ。
あらかじめ、やり方は調べてある。コメントを送り、返信が来たら友達に登録成功という簡単なシステムだ。
『こんにちは、化けの皮さん。僕はスポカイって言います。本名は友達登録してくれたら明かします。僕はずっといじめられていて、化けの皮さんも僕と似てるなぁと思って、メッセージを送らせてもらいました。ぜひ、友達になってくださいっ!』
ちなみに、僕のニックネーム、スポカイはスポーツは一応好きなので、カイト(タコ)の中のスポーツカイトという競技用の凧から取った。
すると、リアルタイムで返信が来た。あまりにも早く友達ができてしまったので、僕は唖然としていた。
『こんにちは、スポカイさん。本当に似てましたね!僕も高2でいじめられっ子です。友達ゼロで、それどころか先生や親からも見放されています。だから、同じような境遇の友達ができて嬉しいです』
やった!友達キタ!
『一度、どこかで会いませんか?』
『いいですよ』
『どこがいいですか?』
『それじゃあ、マックにしましょ』
『了解!』
次の日の放課後、僕は自宅から歩いて10分くらいのマクドナルドへ足を運んだ。すると、そこにはスマホで何かを取っている青年の姿があった。僕と同じくらいの年齢だろうか。
「どうもっ!化けの皮です!今日は化けの皮をはがして初めて友達に会おうと思ってます!!」
化けの皮。つまり、僕の友達だ。
「おっと、あの子でしょうか?ここで、一度中継を中断したいと思います。少々お待ちください」
と、言うが速し、化けの皮を名乗る青年は僕に接近してきた。
「こんにちは!あなたがスポカイさんですか?」
「ああ、そうです。化けの皮さんですよね。よろしくお願いします!!あ、本名は酒井海翔と言います。よろしくお願いしまっす!」
「僕は能化黄河。よろしく」
お互いに自己紹介を終えると、早速黄河が接近してきた。
「ところで、僕はユーチューバーなんだよね。一緒に映ってくれないかな?」
いうと思った。僕は返答は決めてあったが、少し悩んだ。
「どんなことをすればいいんだい?」
気づけば、完全にタメ口で話せるようになっていた。
「えっとね、ひとまず僕と会話してくれたらいいんだ」
なんか、怪しい。でも、YouTubeに映るなんて初めてだったから、もう決めた。
「いいよ」
「ありがとう。じゃあ、ひとまず席座って配信始めるか」
僕らは座って、配信を始めた。好きなこととか、アニメの話とか、自分の話とか、友達の大切さとか。
後日、黄河のチャンネル、「化けの皮剥がす放送局」を開いた。
この前の動画はだいぶバズっていた。コメントもたくさんあって、良かったなぁ、とか、いいねぇ、とか、友達って大切だね、などなどの温かいコメントが届いていた。
それから、僕と黄河は様々な配信を行ってきた。心霊スポットに行ったり、友達を作る方法だったり、何やらゲームをしたり・・・・・。
学校ではめっちゃいじめられているという黄河だが、動画配信をしている時はとても生き生きとしていた。
だが、ある日とんでもない出来事が起こった。
ツバメの巣の配信をしていた時だった。脚立を使ってツバメの巣を覗き見して、ツバメを撫でて、親ツバメからフンを落とされるみたいな内容だったが、そこで燃えた。
『子育て中のツバメを撮影するなんて』
『ツバメの赤ちゃん可哀想』
『高校生ならこれくらい分からないの』
そして、さらに燃えたのは巣から落ちたヒナを助けられなかったこと。そして、そのヒナの死骸を巣に戻して何事もなかったようにしてしまったことだった。
『マジでそれはないわ』
『反省しろ』
そして、無許可で他人の住宅の敷地内で配信していたことも悪かった。
『個人情報』
『化けの皮の裏の顔』
『ファンやめるわ』
『悪ガキとせいぜい頑張るんだな』
『悪ガキコンビ』
『動物愛護法違反と肖像権侵害』
ひたすら罵声を浴びて、更新はストップした。
うぅ・・・・・何でこうなことになったのだろう。
「どうすればいいんだろう・・・・・くそっ、僕ってやつは・・・・・」
ひとまず、僕は何をすることもできなかった。
「大丈夫。それくらいで泣いてどうするんだ。お前のせいじゃない。確かに悪いことしたけど、僕も悪かったんだよ。次からどうにかすればいい。YouTubeはもうやめちまえばいいじゃないか」
「なら、Twitterとかでもいいだろう。ブロガーとして活動しても良い」
「んなこと言われても・・・・・どっちみち、海翔にまで責任を負わせたことが悪かった。こんなのといたら海翔はめちゃくちゃになっちまう。もう別れよう」
黄河がこんなこと言うなんて。僕はつい爆発した。
「おい、黄河!!僕は黄河に出会えたから人生が楽しくなったんだよ。小学校の道徳で友達がどれほど大事か習ってんだろ?そんなんで別れるのは僕を陥れるのと同じことだろ。そんなことひょいと乗り越えればいい。頼む、一緒にいさせてくれ。僕らは友達だったんだろ?分かってんだろ?」
言い方はきつかったが、黄河はその言葉で泣いていた。もちろん、良い意味で。
「・・・・・ありがとう、海翔。そこまで言ってくれる友は初めてだ。頼む、僕が悪かった。一緒にやってってくれるか?」
「いいぜ。ずっとやろうぜ」
炎上から本当の友情が生まれた。小さな友情の物語はここから始まった――。
アオハルの方程式 DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555
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