第353話「中身のない言葉」


病院の中庭にやってきた。


いたるところにベンチがあり、入院中と思われる患者や、病院従事者がゆきかう。


空いているベンチを見つけ、友奈と二人並んで腰かける。



「急なことでびっくりしました」



岩船先生が倒れたということに対しての言葉。


何件もの通知と、端的がゆえに中身のないメッセージ。


状況が呑み込めないほどに困惑した。



「ごめんね・・・私もちょっと慌てちゃって」


「それはまぁ・・・しょうがないです」


「それで、佳奈美ちゃんのことだけど」



佳奈美ちゃん。


岩船先生の下の名前だ。



「はい」


「これ言っていいのかなぁって思うんだけど、まぁいずれ分かることだからさ」



そういう前置きがあった。


病院に到着してから、岩船先生の従兄弟である友奈はいつも通りの振る舞いだった。


だけど、今だけは雰囲気が違う。


何というか、真剣そのもの。


おふざけとか、一切できないような空気感だ。



「佳奈美ちゃんね、多分・・・そう長くないと思う」



端的がゆえに、中身のない言葉。


だけど、察しはつく。


言いたいことが、理解できない訳ではない。



「それって・・・」



だけど、その現実をすんなり受け入れることはできなかった。


脳みそが、混乱している。



「簡単に言えば、病気。それも、治らないやつ」



察していた中身が、しっかりと言葉にされる。


突きつけられた現実は、あまりにも残酷なものだった。


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