第351話「試験と通知」


試験の内容は、端的に言えば難しかった。


これまで、相当な時間を勉強に費やしてきた。


実感を持てるほどに、実力をつけてきた。


だけど、それでも難しいと感じた。


すらすらと解けるところもあれば、そうでないところも。


これだけ努力しても、まだ足りないということ・・・か。


というよりかは、山を外している。


その方が正しいのかもしれない。


そうい意味では、岩船先生の努力と結果はイコールではない。


その考え方は、正しいのかもしれない。



「はぁ・・・」



試験会場の建物を出て、一気に疲労が身体に押し寄せる。


合格している気がしない不安感と、緊張が余計に身体を疲れさせる。


とりあえず、黙ってスマホの電源を立ち上げる。


試験中は電源を切っていたので、そのためだ。


スマホが立ち上がると、いつもは静寂を貫く通知が大量に届く。


どれもメッセージや電話の不在着信。


蒼からがほとんどだが、普段はほとんどやり取りをしない匠馬からのもある。


そして、岩船先生の従兄弟である友奈からのものまで・・・。


今日が試験日だから、応援を・・・と、言うわけではなさそう。


嫌な予感を感じ取りながらも、その通知を一つ一つ確認する。



「・・・っ!?」



内容を確認して、慌てて電話をかける。



『もしもし?』



2コールぐらいで、相手が応答する。


その声は、至って普通。


明るい声で、だけど冷静さのある感じ。



『えっと、通知見ました。その・・・』



声が震える。


明らかに動揺しているのが、自分でもよく分かる。


試験に関するものではない。


むしろ、そのことは完全に頭から吹き飛んでいる。



『大丈夫だよ。今はまだ』



電話越しに聞こえる声は、飯田友奈。


岩船先生の従兄弟だ。


そんな彼女が、一瞬だけ不穏な言葉を口にする。



『今は・・・まだ?』


『ごめんね、今日入試試験だったんだよね?』


『そんなことはどうでもいいんで、詳しいことを聞かせてください!』


『じゃあ、本人にかわるよ』



そう言って、一瞬だけ受話器越しから環境音がきこえる。


数秒後。



『かわったぞ。岩船だ』



単調にそう言う。


声の主は、岩船先生だ。


スマホをつけたら大量に流れてきた通知。


その内容は、岩船先生が倒れたというものだった。


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