第348話「持ちつ持たれつ」


「友彦。さっきの子が、前から言ってた仲が良い友達」



初詣からの帰り道。


蒼から改めて明音についての話題を振られた。



「そうなんだ」


「うん。不思議な人だよ。私なんかと仲良くしてるんだもん」


「別に、不思議なことじゃないと思うけど」


「浮いてる人間と、わざわざ仲良くする人なんて、不思議不思議なものですよ」



さらっと、自分が浮いてる人間と言う蒼。


噂には聞いていたが、本人から直接に聞いたのは初めてかもしれない。



「浮いてるんだ」


「あいや・・・今のナシ! 聞かなかったことにして」


「まぁいいけど・・・」


「うん! ありがと」


「じゃ、これは完全に別件。いま、蒼は辛いこととかない?」


「ないよ?」


「本当は?」


「ないよ」


「そっか。一応彼氏だし、なんかあったら頼ってほしい」


「じゃ、その時はよろしく」



あはは。


冗談交じりで、蒼はそう言う。


正直、頼りにされても、何かしてあげられることはない。


完全に自己満足だ。


蒼のことを知りたいという、自分の欲望。欲求。


ただそれを満たすための言葉。



「はぁ・・・」


「友彦、どうしたの?」


「なんか、自分に嫌気がね」


「急にどうしたの?」


「いや、大丈夫」


「友彦こそ、辛いときは私に相談してね?」


「あ、うん」


「一応彼女なんだし!」



そっくりそのまま返された。


持ちつ持たれつ。


そういう人間関係って、案外気が楽なのかもしれない。


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