第347話「年明けと初詣」
「あけましておめでとうございます」
年が明けて、その挨拶をしたら二人仲良く就寝。
朝になると、両親にまたその挨拶。
その後、特におめかしをするでもなく、普段と変わらない格好で家を出る。
「晴れ着とか着ないんだな」
ボソッと口にする。
横を歩く蒼は、普段とそこまで変わりのない恰好。
コートにマフラーに、防寒対策を施したファッション。
「晴れ着をご希望で?」
「べつに」
「素直じゃないな~」
上機嫌で何より。
年始にわざわざ外出したのは、もちろん初詣のため。
人混みは苦手だが、蒼がどうしても行きたいと言うので・・・。
「さすがの混雑だね」
「済んだらさっさと帰ろうぜ」
「友彦、ほんと人混み嫌いだよね」
友彦と蒼に呼ばれる。
その違和感に、まだこそばゆさを覚える。
「嫌いだ。だからさっさと行こう」
「あ、蒼ちゃん!」
雑踏の中、覚えのある声が聞こえる。
振り向くと、そこには赤いリボンのツインテールをした少女がいた。
「やっほー。あけましておめでとう」
気さくだが、優しさのある声。
「あ、明音・・・」
そう呟く、蒼。
「ごめんね、デート中なのに声かけちゃって」
「ううん、別に」
「初詣だよね?」
「うん」
「そっちは、彼氏くん?」
と、視線をこちらに向ける。
俺と明音には、謎の出会いから生まれた接点がある。
だから別に、知らない人同士ではない。
「そう。友彦だよ」
と、蒼が紹介をする。
「へぇ~。初めまして」
「あ、うん。はじめまして」
とりあえず、空気を読んでそう返しておく。
俺と明音に接点があることは、蒼には話していない。
それは明音も同じことで、ここで初めて出会ったみたいに振る舞っている。
そうしたい事情でもあるのだろうか。
別に知り合いって言えば、それだけの話なんじゃないのか?
色んな疑問が浮かぶが、それを明音に確かめるわけにもいかず・・・。
とりあえずその場は、明音の振る舞いに合わせる形でしのぐしかなかった。
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