第346話「他人行儀への抵抗感」


クリスマスが過ぎると、あっという間に年末になる。


今年は蒼と一緒に年越しそばを食べて、そのまま部屋で団らんと過ごす。



「今年もあっという間でしたね」



と、蒼が言う。


思い返せばあっという間だ。


そんなものだろう。


今年が終われば、また長い1年が始まる。


だけど、それも年末になって、思い返せばあっという間という感想になる。


毎年そんな感じ。



「蒼は、来年どんな1年にしたい?」


「うーん・・・もっと先輩に好かれるように努力する1年!」


「左様でございますか。なら、来年からしてほしいことがある」


「してほしいこと? なんですか?」


「そろそろ、俺のこと先輩って呼ぶの、やめないか?」



別に呼び方なんてどうでもいい。


だけど、先輩って言うのはちょっと他人行儀というか。


以前に、三永瀬さんじゃなくて、蒼って呼んでほしいと言われたことがある。


多分、それも同じなんじゃないかって思う。


どこか他人行儀なのが、何となく寂しい。


そんな感じ。



「なんて呼べばいいんですか?」


「蒼は、なんて呼びたい?」


「そうですね・・・先輩が一番しっくりきますけど・・・」


「蒼がそう呼びたいなら、別にそれでもいい」


「でも、先輩的には嫌なんですよね?」


「まぁ・・・別に何でもいいけど、ちょっと違和感があるというか・・・」


「いいですよ。うーん、先輩の下の名前で、いいですかね?」


「あぁ、それでいいよ」


「じゃ、友彦! って、これから呼びますね」


「よろしく」



なんかこそばゆい感じがしたが、次第に慣れるだろう。


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