第342話「クリスマスのぼっち散歩」
12月24日。蒼へのプレゼントが思い浮かばないまま、その日を迎えてしまった。
日頃の感謝の気持ちを込めて、何かしらの贈り物はしたいと思っている。
なので、ふらっと商店街へ足を運ぶ。
もちろん一人だ。
家を出る時、「私も行く!」みたいなことを蒼に言われたが、丁重にお断りした。
何というか、こういうのは本人に訊くのが一番しちゃいけないことだと思うから。
「おやおや、こんな日に一人でお買い物ですか?」
適当に歩いていると、背後から煽りの強い言葉がかけられる。
すれ違ったのに、全く気づかなかった。
「あ、ども」
振り返ると、そこには海老名姉妹がいた。
明音と歩夢。
どちらもお揃いのコートにマフラーと防寒対策をしているため、パッと見で分からなかった。
「蒼ちゃんは一緒じゃないんですか?」
蒼のことをちゃん付で呼ぶのは姉の方。
明音からの質問。
「まぁ・・・。二人は?」
「クリスマスケーキを買いに」
「なるほど。ケーキか」
「村上先輩は、彼女さんどうしたんですか? 喧嘩でもしたんですか?」
苗字と先輩付けで呼ぶのは妹の方。
歩夢からの質問。
この時期は、一緒に出掛けてないとそんなことを疑われるのか。
「喧嘩はしてない・・・あ、そうそう。良ければ・・・なんだけど」
このタイミングで海老名姉妹と出会ったのは幸運かもしれない。
蒼のプレゼントに関して、二人に相談してみる。
「蒼ちゃんへのプレゼントですか。なんでもいいと思いますよ。なんでも喜ぶと思います」
「っていうか、なんで三永瀬先輩にプレゼントなんですか?」
そんな歩夢の疑問に、一瞬首をかしげたが・・・。
「えっと、彼女」
「えっ・・・三永瀬先輩だったんですか!?」
「あれ? 歩夢知らなかった?」
と、これには姉も少々驚いているよう。
「彼女いるってのは言ってましたけど、まさかほんとにいたなんて・・・」
以前に彼女がいると、話したことがあった。
しかし、その時は彼女の名前を伏せていた。
だから、彼女がいるなんて嘘だと歩夢は思っていたのだろう。
「なるほど、村上先輩を好きになるなんて・・・三永瀬先輩、どこで道を踏み外したんでしょうか」
「なんで俺に棘のあることばっかり言うんだ・・・」
まぁそれはさておき・・・。
「うーん・・・そうですね。蒼ちゃん、化粧とか女の子らしいことあんまりしないから、そういうのはどうです?」
と、友人らしい目線からのアドバイスをする明音。
「え、三永瀬先輩って、あれで化粧してないんですか?」
蒼とほぼ同棲してそこそこ経つが、確かに化粧をしている姿を見たことがない。
そして、それに驚く歩夢。
「そんなに驚くことか?」
と、訊いてみる。
「村上先輩は、三永瀬先輩の見た目、可愛いと思いますか?」
「うん、思うよ」
正直そう言うことに関しては疎い。
ただ、個人的な感性で言えば、可愛いと思う。
恐らく・・・。
「私も可愛いと思います! でも、女の子の可愛いって、ほとんど作りものですからね? 普通は」
なんか、夢を砕くようなお言葉。
「蒼は普通じゃない・・・と?」
「本当に化粧をしてないなら・・・はい! もちろん良い意味で!」
「蒼ちゃんはしてないと思うよ。何というか、本人がよく分からないって言ってたし」
「それであのお肌・・・羨ましい」
素材が良いってやつなのだろうか。
まぁそれはそれとして、本題に戻らせてもらう。
「なら、蒼へのプレゼントは、化粧でいいのか?」
「うーん・・・三永瀬先輩が化粧をしてないなら、ある意味そのままでも良い気がする」
化粧してもしなくても、彼女は可愛いからそのままで良いってことなのだろうか。
「でも、化粧水とか美容液とか、そういうのはあった方がいいと思うよ」
と、明音が言う。
その言葉を聞いて、すかさず歩夢が突っ込む。
「え、それもしてないの!?」
「どうだろ? さすがに使ってると思うけど・・・」
化粧水、美容液。
言葉は聞いたことあるが、あれは化粧とは別物なのだろうか。
俺にはよく分からない世界だ・・・。
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