第341話「すべてを解決するもの」
学校に行って勉強をし、帰宅してから勉強をし。
それを繰り返していると、クリスマスなんてあっという間だ。
12月23日。クリスマスを目前にした今日は終業式。
午前中に学校が終わると、そそくさと岩船先生の自宅へ向かった。
もちろんアポは取ってある。
思いつきで行動しているわけではない。今日は、元々その予定だ。
「おじゃまします」
「久しぶりだな」
「そうですね。数か月ぶりというか・・・」
「勉強はどうだ? もう数週間後には共通テストだろ?」
胃の痛くなる言葉だ。
とはいえ、そのテストのために、ここまで勉強を頑張ってきた。
「万全を期して挑むつもりです」
「まだ数週間先だ。準備を怠るなよ」
冬休みは、クリスマスに年末年始。
年の瀬ということもあり、本来ならイベント盛りだくさんの期間。
いつもとは違う雰囲気を味わえるというだけでも、特別感のある期間。
だが、今年ばっかりはそうも言ってられない。
「ちゃんと勉強しますよ。まぁ、どれだけ勉強しても、不安は拭いきれないですけど」
「そんなものさ」
「それはそうと、少し相談が」
「ん?」
「えっと、蒼っているじゃないですか」
「三永瀬か?」
「はい。彼女にクリスマスプレゼントを渡したくて・・・何を渡せばいいですかね」
「村上が三永瀬にプレゼント? という疑問はさておき、なぜ私に相談する」
なぜ・・・と言われましても。
確かに、岩船先生はクリスマスだとかプレゼントだとか、そういうことには無頓着なイメージが強い。
とはいえ、だ。
「相談できそうな人が、岩船先生ぐらいしかいなくて・・・」
「君は全く・・・」
あきれたような返し。
「暁とかいただろ」
「あぁ、あいつとは全然」
暁匠馬。天文部に所属していた頃は、ちょっとばかし関わりのあった同級生。
彼ならこの手の相談事は頼りがいがありそうだ。
とはいえ、天文部を卒業してから関わったことは一度もない。
やはり・・・と言うべきか。
彼とは住む世界が違うと感じている。
「私も分からないぞ。プレゼントなんて」
「岩船先生なら、もらったら嬉しいものとかあります?」
「そうだな・・・お金が欲しい」
「貪欲ですね」
「すべてを解決するものだからな」
「そうですね・・・」
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