第340話「氷河期のような寒さ」


12月になり、朝晩だけでなく、昼間までも冷え込む季節に。


冷暖房のない自室は、氷河期のような寒さが襲っている。



「寒い・・・」



毛布にくるまる蒼がそう言う。


そこまでするなら、この部屋にいなければいいのでは? と、思ってしまう。



「下なら暖かいぞ」



下と言うのは、2階にある自室の下。


つまり1階。リビングだ。


あそこは冷暖房完備の豪華仕様。



「先輩と一緒にいたいので」


「左様でございますか」


「先輩こそ、どうして部屋にいるんですか? 下で勉強した方が良いと思いますけど」


「居心地が悪くて。自室が一番落ち着く」


「左様でございますか」



居心地が悪いというよりかは、落ち着かないの方が正しいかもしれない。


リビングでは、母氏が慌ただしく家事をしているか、テレビを見ているかの二択。


そんな中、勉強に集中できるかってはなしだ。



「蒼はここにいる理由ないだろ」


「先輩と一緒にいたいって言ったじゃん」


「それは理由なのか?」


「そんなことより、勉強はいいんですか?」


「今日の分は終わり」


「そうですか。じゃあ暖まりましょうよ」


「どうやって?」


「一緒にくるまりますか?」



そう言った蒼は、くるまっている毛布をふわりと広げる。


おいでおいでと言わんばかりに、毛布をひらひらとさせる。



「遠慮しておくよ」


「ひどいや、先輩」


「そんなにイチャイチャしたいのか?」


「したいですよ」



何のためらいもなく言いますね。


俺にそんな根性ないですけど。



「まぁ・・・俺は遠慮するよ」


「どうして・・・先輩ともっと仲を深めたいのに・・・」


「イチャイチャすることで深まる仲なんてあるのか?」


「えっちだって立派なコミュニケーションですよ?」


「左様でございますか」


「それに、えっちは身体が火照って暖まりますから」


「左様でございますか」


「世の中、秋生まれの人が多いって知ってますか?」


「どうした? 唐突だな」


「それは、12月にみんなえっちするからですよ! 私たちもしましょうよ」


「クリスマスですか。その時期は、まだちょっと早いんじゃないか?」


「じゃあ、クリスマス楽しみにしてますからね!」



なんか、変な約束をしてしまったような・・・。


まぁその時はその時・・・ってことにしておこう。



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