第339話「成長と展望」
明音からの問いは、解決したのだろうか。
あれから、明音との接点はない。
こちらから話しかけることもなく、向こうから話しかけてくることもなく。
学校でたまに見かけることはあるが、本当にそれだけ。
いつの日か、妹の歩夢とファミレスで話したことがあった。
その後だが、「よく分からなかった」とだけ返事をもらっている。
それからただ時間だけが過ぎていき、気づけば秋が過ぎ去り、12月。
「どうでした?」
と、いつも以上に目を輝かせながらきいてくる蒼。
いつもの4畳ほどの小さな部屋。自室。
2人でいるにはあまりにも窮屈なこの空間で、蒼は数枚のプリントを並べる。
「私はこんな感じですよ」
そのプリントの中身を見せつけ、そう言う。
黒文字と赤文字が入り混じった数枚の紙。
目が痛くなるほど数字が羅列されてる1枚の紙。
プリントの中身は、期末テストの結果だ。
答案、解答用紙と、全教科の点数が一覧になってる結果用紙。
蒼は相変わらず、高得点をとれている。
それは純粋にすごいと思う。
だけど、今回は自分の点数も褒めておきたいものだ。
「俺はこんな感じ」
「おー! 上がってるじゃん!」
蒼もそう言うほどの、高得点。
今回の主要5教科の平均点は、自己最高位の89点。
全教科の平均点数は83点。
つい1年前まで、これが40点とかそこらだったから、相当な成長。
日頃から勉強をすると、ここまで数字に表れるものなんだな・・・。
「どう? 天才になった気持ちは」
冗談交じりの、蒼からの質問。
正直、答案用紙を見て、答えがすらすらと頭に浮かぶその感覚。
それは、何とも言えない気持ちよさがあった。
「天才じゃないよ。まだ、大学の偏差値には追い付いていない」
それは、その言葉通りの現実。
明らかに学力は上がっているが、まだ足りない。
いま目指しているところは、それだけ高い壁ということ。
「年末に追い込まないと・・・年が明けたらすぐに入試でしょ?」
「うん・・・冬休みは本当に遊ぶ時間ないかも」
岩船先生からフォローを受けつつ、勉強を進める今日この頃。
最初は勉強することを習慣付けるターンから始まった。
最初は1日に1時間とかそこらだった勉強時間は、気づけば平日は4時間。休日はその倍の8時間近く勉強している。
不思議なのが、それだけ長い時間勉強をしているのに、全く苦にならないということ。
全くというのは噓になるが、集中力が途切れないという意味では、気づいた頃には相当な時間が経過している。
「先輩、最近がんばってるもんね」
「蒼も協力してくれてるから・・・ありがと」
「え、いや・・・まぁ。当然のことよ」
「急に動揺するじゃん・・・どうしたの?」
「いや・・・先輩にありがとうって、なんか普通に言われて・・・ちょっと嬉しかった」
「そ、そうですか」
改めてそんなことを言われると、なんだか照れ臭くなる。
「さて・・・勉強するか」
「あはは、テスト終わったのに勉強って、忙しいね」
「そうでもしないと、蒼と一緒の大学に行けないから」
必ず合格・・・なんて、そんな約束はできない。
だけど、やるだけやってみようって、最近はそう思っている。
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