第337話「ファミレスでお食事」


豪華なパフェ、ドリンク、そしてポテトやサラダ。


人が奢ると分かっているからなのか、テーブルには色んな料理が並ぶ。



「こんなに頼んで、食べきれるのか?」


「甘いものは別腹です」


「サラダは?」


「カロリーゼロなのでノーカンです」


「ポテトは?」


「塩の力により無効です」



トンデモ理論を唱えるのが、海老名の妹の方。海老名歩夢。



「そういえば先輩、相談があるんでしたよね?」


「あ、あぁ。そうだった」


「なんですか? 私に相談って。浮気なら受け付けませんよ」


「そんなことはしない。君のお姉さんについて」


「姉さん?」


「まず、明音と蒼って面識あるのか? ってところ」


「蒼って、三永瀬先輩ですよね」


「うん」


「知らないです。でも、学年は同じだから接点はあってもおかしくはないと思います」


「まぁ・・・そうだよね」


「あ、でも、最近仲のいい友達ができたみたいなことは言ってたような・・・」



なるほど。


それが蒼だとするなら、明音と蒼は接点があるで筋が通る。



「というか、なんでそんなこと訊くんですか?」



歩夢はそう言うと、ポテトをひとつまみ。



「まぁ、色々と」


「色々? 姉さんと村上先輩って、そんなに親密な関係だったんですか?」


「いや、そうでもないけど」


「そうじゃないなら、どんな関係なんですか?」


「まぁ、色々」


「またそれですか。これは、一度三永瀬先輩に訊いてみるしかないですね」


「どうして蒼が出てくる」


「これで村上先輩が浮気してたら、三永瀬先輩が可哀そうじゃないですか。それに、姉さんも懲らしめてやらないと」


「そんなんじゃない・・・けど」


「本当ですか? まぁ村上先輩の様相じゃ、モテるなんて無理でしょうけど」



それで納得してくれるならそれでいいけど・・・なんか癪に障る。



「でも、ちゃんと話してほしいですね。そうじゃないなら、私から三永瀬先輩に相談しちゃいますよ?」


「それはやめてほしい・・・分かったよ。まぁでも、大したことじゃないよ。何というか、彼女から意味の深そうな相談を受けまして・・・」



内密に・・・そう言われていたので、どこまで話していいのか分からない。


いや、多分一言も話しちゃダメなんだろう。


だけど、俺一人で抱え込むには荷が重すぎる。


とにかく誰かに擦り付けたい。


ということで、白羽の矢が立ったのが妹である歩夢。


その妹には、人物名を出さずに大まかな概要だけを話した。


明音の友達が、何かに悩んでいるらしい・・・と。そんな感じに。



「そうですか。それを私に話して、どうしたいんですか?」


「いや、明音って人について、聞きたくて」


「それはどういう意味ですか?」


「彼女がこういう相談を俺にしてきた意味を、それを知りたいから」


「そうは言われましてもねぇ・・・」



パフェを頬張りながら、考えるような素振りを見せる。


姉妹だから、何かしらの情報が見えてくると思ったが・・・。



「よく分からない・・・」



そんなことはなさそう。



「あの、姉妹ですよね?」


「村上先輩は、兄弟とかいますか?」


「一人っ子」


「だったら、分からないですよね。兄弟とか姉妹とか、別に仲がいいとは限らないですからね」



それは何となく想像できる。



「まぁわかりました。帰ったら姉さんと話してみますよ」


「ありがと。それと、明音が俺に相談してきたこと、ほんとは内緒にしてほしいってことだったから、そこだけ気を付けて」


「村上先輩って、ほんと最低ですね」


「え、えぇ・・・」


「女の子が先輩のことを信用して相談してきたのに、こんなに簡単に他人に話しちゃうなんて」


「まぁ、もともと俺は最低な人間だから」


「そういうことを言っちゃうところも、ほんとクズ」



そう言う彼女は、ゴミを見るかのような目つき。


どこか悔しいような感情があるが、そうだよなぁって納得するしかない。


何というか、肯定できる言葉が思いつかないから。


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